配合飼料の5割を飼料用玄米で代替しても泌乳最盛期の乳生産に影響しない


[要約]
搾乳牛に給与するTMR中の市販配合飼料の5割を飼料用玄米で代替すると低蛋白質水準となるが、泌乳最盛期の搾乳牛の乾物摂取量、乳量、乳成分に影響を及ぼさない。

[キーワード]飼料用米、破砕、乳牛、乳生産、低蛋白質

[担当]福井畜試・家畜研究部・酪農研究グループ
[代表連絡先]電話:0776-81-3130
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(大家畜)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
新規需要米生産拡大と飼料自給率向上のため、今後も飼料用米の生産拡大が見込まれる中、採食量の多い乳牛での飼料用米利用が求められている。そこで、配合飼料の代替に飼料用米(破砕玄米)を用いて、泌乳最盛期の搾乳牛で給与試験を実施し、乾物摂取量や乳量、繁殖性などに及ぼす影響について検討する。

[成果の内容・特徴]
1. 2産以上の泌乳最盛期のホルスタイン種乳牛6頭を供試し、市販配合飼料中心で飼料用米を給与しない対照区(CP16%)、市販配合飼料の5割を飼料用玄米で代替する飼料用米区(CP14%)の2区分を設定し、分娩後13週間の飼養試験を実施する。試験飼料の組成は表1に示す。
2. 市販配合飼料の5割を飼料用玄米(破砕処理、粒径2mm以下)で代替することで飼料の蛋白質水準は低く、NFC(非繊維性炭水化物)は高くなる(表1)。
3. 乾物摂取量、乳量、乳成分について、両区で有意な差は認められない(表2)。
4. 第一胃内アンモニア態窒素、BUN(血中尿素態窒素)およびMUN(乳中尿素態窒素)は、飼料用米区で低い傾向にある。また、その他の血液性状、第一胃内容液性状には飼料用米給与による影響(pHの低下、乳酸生成等)はみられず、ルーメンアシドーシスの症状を示す牛はいない(表2表3)。
5. 飼料用米区の発情回帰日数は対照区に比べ短い傾向にある(表4)。
6. 破砕処理した飼料用玄米を搾乳牛に給与する場合、乾物で市販配合飼料の5割代替が可能である。

[成果の活用面・留意点]
1. 市販配合飼料の5割を飼料用玄米で代替すると、飼料用玄米が濃厚飼料中34%(全飼料中17%)混合されることになる。
2. 泌乳中後期の搾乳牛6頭を用いて、1期2週間とする反転法の試験も実施した。試験結果は本報と同じ傾向を示しており、泌乳中後期の搾乳牛にも活用できる。
3. 実際の給与に当たっては、自給飼料および飼料用米の正確な分析による飼料計算に基づき、給与飼料の成分調整を行う。
4. 2010年6月〜10月に実施した試験の結果であり、両区ともに暑熱による影響を受けている。

[具体的データ]
 





(和田卓也)

[その他]
研究課題名:乳牛の生涯生産性向上を目指した飼養管理技術の開発
予算区分:県単
研究期間:2008〜2011年度
研究担当者:和田卓也、森永史昭、加藤信正

目次へ戻る