肥育中後期の黒毛和種に濃厚飼料の6割を飼料用玄米で代替給与できる


[要約]
肥育中後期(月齢16から23カ月)に配合飼料の6割を飼料用玄米で代替給与しても、配合飼料を給与した場合と同程度の飼料を摂取および増体が見られる。一方、血液中のビタミンA、総コレステロール、尿素態窒素および無機リン値は低めに推移する。

[キーワード]肥育、飼料用米、ビタミンA

[担当]福井畜試・家畜研究部・肉牛バイテク研究グループ
[代表連絡先]電話:0776-81-3130
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(大家畜)
[分類]研究・参考

[背景・ねらい]
福井県では、大規模稲作農家と畜産農家の間で契約して新規需要米である飼料米の生産拡大を推進している。そこで、飼料米の活用を推進するため、濃厚飼料の最大6割を代替給与し、肥育牛への影響を明らかにすることで、飼料給与技術を確立する。

[成果の内容・特徴]
1. 供試牛は福井県産黒毛和種去勢牛10頭(対照区5頭、試験区5頭)を用い、14カ月齢以降の肥育中後期に配合飼料(DM中CP13.1%、TDN88.3%)を1日2回計10kg給与した対照区と配合飼料を飼料用米(破砕玄米)に代替した試験区を設け、飼料用米は配合飼料の上にトップドレス給与する。なお、両区とも全区間粗飼料として稲ワラを1から2kg給与する。
2. 配合飼料の原物摂取量は16カ月齢以降両区とも同様に推移し、10s程度の摂取がみられる。また、試験区で14カ月齢から飼料用米を給与し馴致した結果、16カ月齢で配合飼料に飼料用米の代替した率が平均57.8%であり、体重は両区に差がなく発育する(図1)。
なお、16カ月齢以降の飼料用米を代替した栄養価は計算値でDM中CP9.6%TDN90.9%である。
3. 血中ビタミンA濃度、総コレステロール(TCHO)、尿素態窒素(BUN)および無機リン(IP)値は対照区に比較すると試験区が低めで推移する(図2表1)。
4. 肥育月齢22カ月における各区1頭を飼料用米給与前と給与1.5および3.5時間後の第一胃内溶液性状であるpH、胃液内原虫数、胃液総VFA(揮発性脂肪酸)濃度および胃液A/P(酢酸/プロピオン酸)比は両区ほぼ同様で、アシドーシス症状も認められない(図3)。

[成果の活用面・留意点]
1. 飼料用米給与には肥育前期に馴致期間を設け、徐々に増量する。
2. 配合飼料に飼料用米を6割程度給与すると、血中ビタミンA濃度が早く低くなるため、飼養管理には注意する。
3. 飼料用米の代替により、蛋白質、ミネラル等の含量が低下するので留意が必要である。

[具体的データ]

(野村賢治)

[その他]
研究課題名:イネ主体飼料を用いた美味しい若狭牛生産技術の確立
予算区分:県単
研究期間:2009〜2010年度
研究担当者:野村賢治、小林崇之、竹内隆泰、近藤守人

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