籾殻配合換羽飼料の不断給餌は卵用名古屋種の誘導換羽を可能にする


[要約]
産卵後期(53週齢)の卵用名古屋種に、粉砕籾殻を配合したふすま主体換羽飼料を不断給餌で21日間給与することにより休産させ、休産後の産卵率と卵質を改善することができる。

[キーワード]卵用名古屋種、粉砕籾殻、ふすま、換羽飼料、不断給餌、誘導換羽

[担当]愛知農総試・畜産研究部・家きんグループ
[代表連絡先]電話:0561-62-0085
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(中小家畜)
[分類]技術・普及 

[背景・ねらい]
アニマルウェルフェアの観点から、絶食による誘導換羽法の代替技術として、ふすま主体換羽飼料給与による誘導換羽が行われるようになったが、大型鶏である卵用名古屋種は制限給餌が有効であり、不断給餌による手法は休産が難しく十分に検討されていない。
  そこで、これまでのふすま主体換羽飼料に粉砕籾殻を配合したさらなる低エネルギー換羽飼料の不断給餌(飽食)による誘導換羽の有効性を検討することをねらいとする。

[成果の内容・特徴]
1. 産卵後期(53週齢、5月)に、無処理区(換羽処理無し;成鶏用飼料(ME 2,870kcal/kg)を継続して不断給餌)、絶食区(体重25%減少まで17日間絶食)、制限区(ふすま主体換羽飼料;ME 1,915kcal/kg:配合割合(重量%;ふすま97.2%、粒状炭酸カルシウム1.75%、第3リン酸カルシウム0.7%、食塩0.25%、ビタミンプレミックス0.1%))の制限給餌(30g/日・羽、21日間給与)に対し、飽食区(ふすまの40%を粉砕籾殻に代替してさらに低エネルギー化したふすま主体換羽飼料;ME 1,299kcal/kg:配合割合(重量%;ふすま58.3%、粉砕籾殻38.9%、その他同じ)を不断給餌(21日間給与))を設定(各区30羽3反復)し、休産状況と休産後の産卵率と卵質に及ぼす効果を調査する。
2. 飽食区の飼料摂取量は、換羽飼料に慣れるにつれて増加する(図1)。一方、飽食区の体重は換羽飼料に慣れるにつれて減少率が緩やかになり、絶食区及び制限区よりも減少率が小さい(図2)。
3. 産卵率は、絶食区、制限区、飽食区すべてで休産し、飽食区の再産卵の立ち上がりは絶食区及び制限区よりも早い。休産後は、飽食区は無処理区より高く、かつ絶食区、制限区と同等に推移する(図3)。
4. 卵巣重量は、14日目、20日目とも絶食区、制限区、飽食区すべてで無処理区に対し、有意に軽くなり、生殖器の萎縮が確認される(表1)。休産後の卵質は、絶食区、制限区、飽食区すべてでハウユニット、卵殻強度、卵殻色色相(b/a値)ともに、無処理区より優れて推移し、飽食区は絶食区、制限区と同等の効果が確認される(表1)。
5. 産卵後期(53週齢)の卵用名古屋種に、粉砕籾殻を約40%配合したふすま主体換羽飼料を不断給餌で21日間給与することにより休産させ、他の誘導換羽法に比べて少ない体重減少で個体に負担を小さく、休産後の産卵率と卵質を改善することができる。

[成果の活用面・留意点]
1. 気温が低い冬季は体重減少率が大きくなるので、ふすま主体換羽飼料への粉砕籾殻の配合割合を減らし、熱量を上げることが望ましい。
2. 籾殻の使用については「飼料として使用する籾米への農薬の使用について」(平成21年4月20日付け農林水産省消費・安全局、生産局四課長通知、平成22年9月7日一部改正)に留意する。

[具体的データ]
図1 飼料摂取量の推移  図2 体重減少率の推移
図3 産卵率の推移
表1  卵巣重量及び卵質(ハウユニット、卵殻強度、卵殻色色相)の推移

(安藤 学)

[その他]
研究課題名:採卵鶏の産卵調整技術の確立
予算区分:実用技術
研究期間:2008〜2010年度
研究担当者:安藤 学、石代正義、美濃口直和、近藤 一、内田正起

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