肥育豚における米ソフトグレインの消化率は調製前の粉砕処理により向上する


[要約]
籾米を粉砕処理してソフトグレインに調製、肉豚用配合飼料に20%配合して肥育後期に給与すると、籾米を無粉砕で調製したソフトグレインと比較して粗たん白質消化率、可溶性無窒素物(NFE)消化率、乾物消化率が向上する。

[キーワード]籾米、粉砕処理、ソフトグレイン、消化率

[担当]三重畜研・中小家畜研究課
[代表連絡先]電話:0598-42-2029
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(中小家畜)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
家畜の飼料自給率の向上に向け、飼料用米の利用が養豚農家で始まっている。しかしながら飼料用米価格は現状の飼料原料と比べ高価であり、普及を遅らす原因の一つとなっている。この研究では、収穫した穀物を乾燥せずに貯蔵し、火力乾燥に係る調製コストが低減できるソフトグレイン調製技術を用いて、米ソフトグレインを肉豚用配合飼料に配合して肥育後期に給与したときの飼料利用性について明らかにすることを目的とし、飼料用米の養豚飼料としての円滑な利用を目指す。

[成果の内容・特徴]
1. 飼料用米「はまさり」(水分含量17.8%)を無粉砕籾米のままと、籾米を5mmメッシュの粉砕機で粉砕して二重のビニール袋に入れ、3%ギ酸・1%プロピオン酸溶液をコメ重量の30%量加え脱気して2週間保存し、ソフトグレイン(SG)に調製する。
2. 調製したSGを肉豚用配合飼料に乾物換算20%量配合して籾米SG飼料、籾米粉砕SG飼料とし、対照飼料としては肉豚用配合飼料にトウモロコシ二種混合飼料を粗たんぱく質が同程度になるよう配合する(表1表2)。
3. 当研究所で生産されたLWD交雑種雄去勢10頭、平均体重78kgを用い、ケージで単飼、体重の4%換算定量給餌(風乾物相当)を9日間行い最後の5日間採ふんし、飼料の消化率を全ふん採取法により測定する。
4. 飼料の各消化率は対照飼料に比べ両SG配合飼料給与が低くなる。SG配合飼料を比較すると、籾米SG配合飼料に比べ籾米粉砕SG配合飼料給与が粗たん白質、可溶性無窒素物(NFE)、乾物消化率が高くなる(表3)。
5. 参考までにソフトグレイン単体の乾物当たりの各消化率を対照飼料の消化率から推定すると表4のとおり、可消化養分総量(TDN)籾米SGは45.5%、籾米粉砕SGは69.9%と調製前に原料を粉砕処理することで20%以上向上する。

[成果の活用面・留意点]
1. 米ソフトグレインを利用する養豚農家で配合設計の基礎データになる。
2. 有機酸を使用してソフトグレインを調製する場合は、酸の取り扱いに注意する。
3. ギ酸の飼料中含有量は0.5%以下、プロピオン酸の含有量はサイレージ中1.0%以下、飼料中0.3%以下でなければならない(飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律)。
4. 籾米の使用については「飼料として使用する籾米への農薬の使用について」(平成21年4月20日付け農林水産省消費・安全局、生産局四課長通達)に留意する。

[具体的データ]
表1 飼料原料の成分組成(単位:乾物あたり%)
表2 飼料の成分組成(単位:乾物あたり%)
表3 飼料の消化率(単位:乾物あたり%)
表4 ソフトグレインの消化率(単位:乾物あたり%)

(市川隆久)

[その他]
研究課題名:低・未利用食品残さの高度利用技術の開発
予算区分:実用技術
研究期間:2008〜2010年度
研究担当者:市川隆久、西 康裕

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