ソルガムの除草剤を使用しない散播・密植栽培のための適品種


[要約]
ソルガムの散播・密植栽培は、茎数、草丈の伸長速度の番草別推移の違いにより、品種群でその適性が異なる。この栽培への適性が高いスーダン型ソルガム品種「涼風」は播種量が10aあたり6kgの場合でも雑草発生量が少ない。

[キーワード]ソルガム、散播栽培、密植栽培、雑草

[担当]長野畜試・飼料環境部
[代表連絡先]電話:0263-52-1188
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(草地)
[分類]技術・参考  

[背景・ねらい]
ソルガムはトウモロコシに比べて初期生育が遅く、雑草との競合により大きく減収する場合が多いものの、その一方で、高密度で散播して、早期に密生したソルガム群落をつくる散播・密植栽培により除草剤を使用しない栽培が可能となる。こうした無除草栽培では、播種量を増やし、一定以上のソルガム茎数を確保することが重要となるが、ソルガム類は、遺伝的変異が多様であることから品種間で無除草栽培への適性が異なることが考えられる。そこで、本研究では除草剤を使用しない散播・密植栽培のための品種適性を明らかにした。

[成果の内容・特徴]
1. ソルガム収穫時の雑草量はスーダン型ソルガムに属する品種で少なく、子実型およびソルゴー型ソルガムに属する品種で多い。この傾向は特に2番草収穫時に顕著である(図1)。
2. 10aあたり8kgの散播密植栽培により1番草収穫時のソルガム茎数はすべてのタイプの品種で200本/m2程度を確保できるが、2番草では、雑草発生量の少ないスーダン型、スーダングラスの品種では180本/m2程度となっているのに対して、雑草発生量の多い子実、兼用およびソルゴー型のものは、80本/m2以下に減少する(図2)。
3. 草丈の伸長速度も1番草では品種間差は小さいが、2番草ではスーダン型、スーダングラスの品種が他のタイプの品種と比較して速い(図2)。
4. 雑草発生量の少ないスーダン型ソルガム品種「涼風」では、播種量が6kgの場合でも収穫時の雑草量が少ない(図3)。
5. 以上の結果から茎数が十分確保でき、草丈の伸長速度が速いスーダン型およびスーダングラスに属する品種は、雑草との競合力が強く、除草剤を使用しない散播・密植栽培の適性が高い。これに対し、2番草茎数が少なく、草丈の伸長速度が遅い子実型およびソルゴー型ソルガムに属する品種は本栽培の適性が低い。

[成果の活用面・留意点]
1. ソルガムの除草剤を使用しない散播・密植栽培を行う場合の品種選定の場面で活用できる。
2. ヒエ、ヒユ類、シロザ等1年生のイネ科および広葉雑草が優占する耕作地における成績である。
3. 「ヘイスーダン」で5%の倒伏があった他は、いずれの品種も倒伏はなかった。
4. 本成績は、長野県畜産試験場(標高750m)で得られた成績である。

[具体的データ]

(長野畜試)

[その他]
研究課題名:ソルガムの省力・低コスト栽培技術の開発
予算区分:委託プロ(バイオマス)
研究期間:2006〜2011年度
研究担当者:水流正裕、清沢敦志、矢口直樹、後藤和美

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