ピンク系グラジオラス「常陸はなよめ」(仮称)の育成


[要約]
花色がピンクで白の条斑とぼかしが入るグラジオラス新品種「常陸はなよめ」を育成した。季咲き栽培における到花日数は95日で、球根増殖、市場評価、生産者評価のいずれも優れている。多用途に向く大輪系グラジオラスとして有望である。

[キーワード]グラジオラス、育種、品種

[担当]茨城農総セ・生工研・果樹花き育種研究室、同・園研・花き研究室
[代表連絡先]電話:0299-45-8330
[区分]関東東海北陸農業・花き
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
茨城県のグラジオラスは球根生産、切り花生産でそれぞれ全国1位、2位を占める重要な花き品目となっている。近年の消費低迷や球根の輸入自由化に対応し産地の活性化を図るため、新たな商材として利用できる県オリジナル品種を育成する。

[成果の内容・特徴]
1. 「常陸はなよめ」は、1999年に「富士の雪」を種子親、「ハイスタイル」を花粉親として交配し、得られた135の実生個体から、花色、草姿などを指標に選抜した品種である
2. 花色はピンク(RHSカラーチャートの68D)で、白の条斑とぼかしが入る(表1図1)。
3. 花径は11.3cmと大輪系である(表1図1)。
4. 季咲き栽培における到花日数は95日で、「トラベラ」や「舞姫」よりも3〜6日遅いが (表1)、抑制栽培では「トラベラ」と差がない(データ省略)。
5. 木子の着生数は「トラベラ」の約1.9倍で、球根増殖は良好である(表1)。
6. 市場評価では花色、花の形、花の大きさ、商品性のいずれも優れており、現在のピンク系主力品種「トラベラ」よりも評価が高い(図2)。また一年を通しての需要が期待でき、業務、小売り、稽古の用途に対応・利用可能である(データ省略)。
7. 現地試験における生産者評価では、「トラベラ」に比べて収量、作りやすさ、病害虫発生、総合評価で優れており(図3)、全ての作型で導入希望がある。

[成果の活用面・留意点]
1. 球根は茨城県グラジオラス球根協会を通して県内生産農家に配布する。
2. グラジオラスは連作を嫌うので、同じ圃場では4〜5年栽培しない。
3. 県内の季咲き、抑制栽培に適する品種である。
4. 本系統は現在、出願公表中である。

[具体的データ]
図1 グラジオラス「常陸はなよめ」の花容 図2 グラジオラス「常陸はなよめ」の市場評価
表1 グラジオラス「常陸はなよめ」の特性
図3 グラジオラス「常陸はなよめ」の生産者評価(2008年:回答者1名、2圃場)

(坂井佳代子)

[その他]
研究課題名:新品種育成普及促進事業(花き新品種の育成)
予算区分:県単
研究期間:1997〜2008年度
研究担当者:坂井佳代子、鈴木一典、本図竹司、高津康正、眞部徹、霞正一
発表論文等: 品種登録の出願公表(出願番号第24698号)2010年7月21日

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