出穂期後30日の日平均気温27℃以上の有効積算温度からの白未熟発生の推定


[要約]
水稲の白未熟粒の発生比率は、出穂期後30日間の日平均気温27℃以上の有効積算温度と相関が高い。このことから品種ごとに推定式を作成することにより、出穂期ごとに白未熟粒の発生程度を推定できる。また、過去の気温データから白未熟粒が増加する期間を推定でき、作期分散の指導に活用できる。

[キーワード]水稲、高温登熟、白未熟粒、推定式

[担当]埼玉農総研・水田農研
[代表連絡先]電話:048-521-5041
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・水田作畑作
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
2010年の記録的な猛暑により、埼玉県内では「彩のかがやき」など晩生種を中心に白未熟粒が多発し、規格外米が多く発生した。そこで、玄米の外観品質の安定化を目標に、2007〜2010年の奨励品種決定調査の早植栽培、普通栽培のデータ等から白未熟粒発生推定式を作成する。これにより、それぞれの地域の気温データを利用した高品質安定生産に寄与できる。

[成果の内容・特徴]
1. 検査等級を下げるほどの白未熟粒が増加する出穂後20日間の日平均気温の閾値は概ね26〜27℃程度であるとみられる(森田、日作紀77(1)1-12,2008)。このことから障害の発生する基準温度を27℃と推定し、有効積算温度法により白未熟粒発生比率の推定を試みた。
 その結果、供試したいずれの品種も出穂20日間の平均気温よりも出穂期後30日間の有効積算温度でより高い相関が得られた(図1)。
2. 白未熟粒の発生比率(Y)は次の式で推定できる。
 「彩のみのり」 Y = 1.785 + 0.685 t
 「彩のかがやき」 Y = - 1.308 + 0.868 t
 「日本晴」 Y = 0.237 + 0.345 t
 t:出穂期から30日間の日平均気温27℃以上の積算温度
3. 「彩のみのり」の2007〜2010年の未知のサンプル(n=23)について、上記推定式にあてはめたところ、推定値と実測値の誤差は決定係数R2=0.968、標準誤差3.92である(図2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 当該地域の過去の気温を推定式に当てはめることにより、白未熟粒の発生が少ない作型が推定できる。
2. 品種は「彩のかがやき」、「彩のみのり」、「日本晴」に適用できる。
3. 白未熟粒は玄米を1.8mm相当の米選機で篩った後、穀粒判別器(S社製)で測定し、乳白粒、基部未熟粒、腹白・背白粒を合計したものである。
4. 細粒灰色低地土から得られた結果である。

[具体的データ]

(荒川 誠)

[その他]

研究課題名:水稲等の新品種定着化研究、水稲・麦類・大豆の現地支援及び累年調査事業
水稲高温障害緊急対策事業

予算区分: 県単
研究期間: 2007〜2010年度
研究担当者: 荒川誠、石井博和、箕田豊尚、関口孝司、大岡直人、鎌田淳

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