バイオフォトンの測定により、スルホニルウレア系除草剤抵抗性雑草が判別できる


[要約]
スルホニルウレア系除草剤処理後に発生する微弱光の強度を測定することにより、 イヌホタルイやコナギのスルホニルウレア剤抵抗性系統を迅速・簡便に判別できる。

[キーワード]バイオフォトン、除草剤抵抗性雑草

[担当]静岡農林技研・植物保護科、花き科
[代表連絡先]電話:0538-36-1556
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・水田作畑作
[分類]研究・参考

[背景・ねらい]
既存の除草剤に抵抗性を持つ除草剤抵抗性雑草が発生し、問題となっている。雑草の適切な管理には除草剤抵抗性の有無を判定することが必要だが、一般的な感受性検定では、結果を得るまでに1〜4週間かかってしまう。そこで、新しい生体情報の指標であるバイオフォトン(生体微弱発光)を利用した、迅速・簡便な除草剤抵抗性雑草の判別法を開発する。

[成果の内容・特徴]
1. スルホニルウレア系除草剤(SU剤)抵抗性イヌホタルイにSU剤を処理すると、溶媒処理に比べ発光が増強するが、感受性系統ではSU剤処理をしても溶媒処理に対する発光の増強程度が小さい(図1A)。SU剤処理による発光の増加が最大となる時間の前後10時間のSU剤処理時と溶媒処理時の平均発光強度の差をSU感受性系統と比較することにより、SU剤抵抗性系統を判別できる(図1B)。
2. イヌホタルイでは、栄養成長期から開花期の茎で、抵抗性系統と感受性系統の間でSU剤処理後の発光強度の差が大きく、結実期を除く長い期間で抵抗性系統が判別できる(図2)。
3. 微弱発光の測定は、5mm長程度に切断したイヌホタルイの茎をシャーレに少量(〜0.5 g)量り取り、除草剤あるいは溶媒に浮かべ、フォトンカウンターで測定するだけであり、サンプルの準備から判定まで2〜3日で終了する。
4. SU剤抵抗性コナギでも、同様の方法により、SU剤抵抗性系統を判別できる(図3)。

[成果の活用面・留意点]
1. 本技術はサンプル調製が簡単なので、安価で多検体の測定が可能な測定器の開発により、短時間で多サンプルの評価が可能となり、抵抗性バイオタイプの分布実態調査等に活用できる。
2. イヌホタルイは、静岡県内で採取された感受性系統(磐田バイオタイプ)および抵抗性系統(大東バイオタイプ)、コナギは、国内で採取された図中に示した感受性系統および抵抗性系統を用い、SU剤として100 ppmベンスルフロンメチル水溶液を用いた結果である。
3. 実用場面では、本技術による抵抗性判別が容易な開花期前後の個体を用いるのが望ましい。
4. 照明下でサンプル調製すると、クロロフィル蛍光が発生しノイズが大きくなるので、サンプル調製は写真現像用ランプなどを利用して弱光下で行う。
5. 阻害剤試験の結果から、バイオフォトンの発生にはチトクロームP450によるSU剤の解毒代謝反応が関与すると予想される。したがって、チトクロームP450が解毒代謝に関与する除草剤であれば、その抵抗性系統が判別できる可能性があるが、現時点でSU剤以外の抵抗性の判別の可否は未確認である。

[具体的データ]
図1 SU剤抵抗性および感受性イヌホタルイのSU剤応答発光
図2 SU剤抵抗性および感受性イヌホタルイの時期別のSU剤による発光増強程度 図3 SU剤抵抗性および感受性コナギにおけるSU剤応答発光

 

(稲垣栄洋、石田義樹)

[その他]
研究課題名:バイオフォトンの発生メカニズムの解明とその利用技術の開発
予算区分:県単
研究期間:2006〜2010年度
研究担当者:稲垣栄洋、石田義樹、貫井秀樹、伊代住浩幸、加藤公彦、影山智津子

発表論文等:Inagaki et al.(2008) Weed Biol. Manag. 8: 78-84.
Inagaki et al.(2009)Pestic. Biochem. Physiol. 95: 117-120.
稲垣ら. 特開 2006-257009.


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