下総台地の野菜畑における深さ30mまでの土壌水の硝酸等水溶性イオン濃度


[要約]
調査地点の土壌水の硝酸イオン濃度は、深さ12.5m以上では30〜130mg/Lであるが、13.5m以下では2mg/L以下で低い。深さ13.5m以下は、土壌が暗灰色でマンガンイオン濃度が高いことから、還元状態にあると推測される。

[キーワード]野菜畑、ボーリング調査、土壌水、硝酸、マンガン

[担当]千葉農林総研・生産環境部・土壌環境研究室
[代表連絡先]電話:043-291-9990
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・土壌肥料
[分類]研究・参考

[背景・ねらい]
千葉県内では、環境基準値を超える硝酸態窒素が検出される井戸があり、その要因の1つに、畑地での施肥が指摘されている。畑地から流出する硝酸イオンが地下水に及ぼす影響を明らかにするために、施肥量が比較的多い下総台地上の野菜畑で深さ30mのボーリングを行い、地下における硝酸をはじめとする水溶性イオン濃度の推移を調査する。

[成果の内容・特徴]
1. ボーリング地点は、標高が37mで下総台地上の富里市内にあり、主にスイカやニンジンが栽培されている腐植質普通黒ボク土、非埋没腐植質の野菜畑である(図1)。
2. 調査地点の深さ0〜2.9mが黒ボク土、2.9〜4.0mが茶褐〜乳灰色の常総粘土、4.0〜12.6mが主に茶褐灰〜褐色の砂、12.6〜13.4mが茶灰色の粘土である。深さ13.4〜30.0mは還元的状態にあることを示す褐灰〜暗灰色(グライ色)の砂、シルトあるいは粘土である(図2)。
3. 土壌水の硝酸イオン濃度は、深さ0.5〜1.5mが107〜133mg/L、2.5〜9.5mが29〜78 mg/L 、10.5〜12.5mが88〜118mg/Lである。一方、深さ13.5m以下は2mg/L以下で著しく低い。硫酸イオン濃度は11〜505 mg/L の範囲にあり、深さ13.5〜17.5mが高い(図3)。
4. 土壌水の鉄イオン濃度は、深さ11.5mが0.02mg/L、13.5mが0.04mg/Lであるが、それ以外の深さは0.001mg/L以下で低い(データ省略)。マンガンイオン濃度とモリブデンイオン濃度は、深さ13.5m以下が高く、13.5〜15.5mがそれぞれ0.3〜1.3mg/L、0.4〜0.9mg/Lで特に高い(図3)。
5. 調査地点における深さ13.5m以下の土壌は還元状態にあり、マンガンが溶出していると判断される。このため、脱窒が進み硝酸イオン濃度が著しく低下していることが推察される。

[成果の活用面・留意点]
1. 下総台地の地下水源は台地上の降雨であり、他の水脈からの流入はほとんどないと考えられる。
2. 調査地点周辺の肥料及び有機物による年間窒素投入量は、平均32kg/10aである。
3. 千葉県地質環境インフォメーションバンク(http://wwwp.pref.chiba.lg.jp/pbgeogis/servlet/ infobank.index?hp_number=0034878304)によると、下総台地上における他のボーリング調査では、深さ15m以下の土壌が暗灰色である地点と、そうでない地点がある。これらの調査では、土壌水の硝酸イオン濃度は測定されていない。

[具体的データ]
図1 下総台地の分布と調査地点
図2 ボーリング調査の柱状図
図3 土壌水の陰イオン及び陽イオン濃度

(八槇 敦)

[その他]
研究課題名:印旛沼流域における畑地からの硝酸態窒素による環境負荷の実態把握と負荷低減対策の評価
予算区分:県単
研究期間:2008〜2010年度
研究担当者:八槇 敦

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