集約的酪農地帯の草地はアンモニアを吸収する
|
|
[要約] |
濃度勾配法を用いたアンモニアフラックス観測の結果、集約的酪農地帯に立地する草地はアンモニアのシンクとしてはたらき、年間の乾性沈着量は16.5kg N ha-1である。 |
[キーワード]濃度勾配法、アンモニアフラックス、乾性沈着 |
[担当]畜産草地研・草地多面的機能研究チーム
[代表連絡先]電話:029-838-8611
[区分]畜産草地、共通基盤・土壌肥料、関東東海北陸農業・関東東海・土壌肥料
[分類]研究・参考 |
|
[背景・ねらい] |
家畜ふん尿の窒素のうち,一部は堆肥化等のふん尿処理過程でアンモニアとして揮散する。揮散したアンモニアのその一部は乾性沈着(気体として降下・付着)、湿性沈着(雨水として降下)として地表に沈着し、地域の生態系に様々な影響を与えるが、わが国ではその実態が不明である。本研究では草地植生上のアンモニアフラックスを観測することにより、収支を明らかにする。 |
[成果の内容・特徴] |
1. |
1. 草地植生上の大気中のアンモニア濃度は施肥直後を除くと2〜10μg N m-3である(図1)。 |
2. |
2. アンモニアフラックスは施肥直後に明瞭な揮散ピークがみられる(図2)。 |
3. |
3. 施肥直後を除くとフラックスは負の値を示し、大半の期間において草地への沈着を示す(図2)。 |
4. |
4. 年間のフラックスを積算した収支は、堆肥区で-10〜-19 kg N ha-1 yr-1(平均-14.4)、化学肥料区で-15〜-20 kg N ha-1 yr-1(平均-18.6)であり、両者で平均16.5 kg N ha-1 yr-1の乾性沈着が生じる(表)。 |
5. |
5. 施用窒素(全窒素:T-N)に対する揮散率は3年の平均で2.0%(堆肥区)〜3.5%(化学肥料区)である(表)。 |
6. |
6. 以上のことから、集約的酪農地帯に隣接する草地ではアンモニアの発生量よりも沈着量の方が大きく、草地が周辺で発生したアンモニアのシンクとなっていることが示された。 |
|
[成果の活用面・留意点] |
1. |
家畜ふん尿を起源として生成されたアンモニアの一部は大気を介して地域内に沈着することを示す基礎知見である。 |
2. |
今回の実験で示された乾性沈着量は栃木県北部の集約的酪農地帯に立地する草地での観測に基づくものである。 |
3. |
今回用いた濃度勾配法では粒子状アンモニアは除去して観測したものである。 |
|
[具体的データ] |
|
[その他] |
研究課題名:草地生態系の持つ多面的機能の解明
中課題整理番号 :421b
予算区分 :基盤、科研費
研究期間 :2006〜2010年度
研究担当者:寳示戸雅之、松浦庄司、林 健太郎(農環研)
発表論文等:
1) Hojito M et.al. (2010), Soil Science and Plant Nutrition, 56, 503-511
2) 寳示戸雅之(2011) 農業由来のアンモニア負荷-その環境影響と対策 113-136 博友社
|
|
目次へ戻る |