箱罠による亜成獣以上のイノシシの捕獲には反応高40cm程度のトリガーが有効


[要約]
縞の残るイノシシの幼獣(通称うり坊)では体高が約40cm止まりだが、縞が消えて1才を迎える亜成獣では体高が約50cmに達する。幼獣の捕獲を避け、亜成獣以上の大型イノシシを箱罠で捕獲するには、体高で反応するトリガーの高さは40cm程度が有効である。

[キーワード]イノシシ、箱罠、選択捕獲、反応高、飼育実験、野外実験

[担当]中央農研・鳥獣害研究サブチーム、栃木県
[代表連絡先]電話:029-838-8928
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・病害虫(鳥獣害)、共通基盤・病害虫(虫害)
[分類]技術及び行政・参考

[背景・ねらい]
イノシシによる農作物の被害が深刻なため、個体数を減少させる捕獲が奨励されている。近年、箱罠による捕獲技術が向上し、有害鳥獣駆除によるイノシシの捕獲数は増加している。しかし、その多くは幼獣である小型イノシシである。春に出産した親が子を失うと再妊娠するとの指摘があることから、幼獣を多く獲ることで捕獲数が上がっても、個体数の減少には直結しない可能性がある。そこで、亜成獣以上の個体を選択的に捕獲することのできるトリガーの反応高を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. イノシシ(飼育あるいは野生)の成長パターンは、縞の残る幼獣(通称ウリ坊、約4ヶ月齢未満)では体高約40cmまでであるが、1.0才の亜成獣では約50cmに達する(図1)。
2. 飼育ケージ内に横糸を張ったトリガーを設置し、その下をイノシシに通過させて、トリガーの反応を調べた。トリガーは、イノシシが横糸に触れて、糸が引っ張られることで作動する。実験で用いたケージの大きさは、亜成獣では縦横各1m長さ4m、幼獣では縦横各1m長さ2mである。
3. 飼育下でのトリガー反応試験では、幼獣の場合、横糸の高さが25cmで100%、30cmで45%の割合でトリガーが反応し、35cm以上では反応率13%と作動しにくい(図2)。一方、亜成獣では45cmで反応率80%と十分作動し、50cm以上では全く作動しない。
4. 野外での捕獲実験では、通常、5〜20cm程度と低く設定されるトリガーの作動位置を40cmの高さに上げると(図3)、20cm及び30cmの場合と比べて、100罠日当たりに捕獲される亜成獣以上の個体数は多く、また、1才以下の幼獣のみが捕獲される割合が減少して、亜成獣以上の大型個体を含む割合に増加傾向が見られる(図4)(χ二乗検定、P<0.10)。

[成果の活用面・留意点]
1. 体高の違いにより、箱罠捕獲でのトリガーの反応高を変えることで、大型個体の捕獲推進と幼獣個体の捕獲回避ができ、より有効な個体数管理が可能となる。
2. 箱罠に出現するイノシシの足跡の大きさに対応して、トリガーの反応高を調整すると捕獲効率が高まる。特に小さなうり坊が出現し始める春から夏にかけて、トリガーを高くすると、親の取り逃がしを抑制できる。
3. トリガーの構造や材質によっては、反応時の遊びなどが異なるため、あらかじめ 実際の反応高を確認する。

[具体的データ]
図1.イノシシの体高に見られる成長曲線図2.飼育下におけるトリガーの反応試験
図3.野外での捕獲試験に用いた箱罠の基本構造図4.トリガーの反応高別の100罠日当たりの亜成獣以上の個体の捕獲数(折れ線グラフ)及び捕獲内容の割合(棒グラフ)

(仲谷 淳)

[その他]
研究課題名:野生鳥獣の行動等の解明による鳥獣害回避技術の開発
課題ID:421-c
予算区分:実用技術、基盤
研究期間:2007〜2010年度
研究担当者:仲谷淳、新部公亮(栃木県県民の森)、松田奈帆子(栃木県自然環境課)、矢野幸宏(栃木県県民の森)、丸山哲也(栃木県自然環境課)、須永重夫(足利市)

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