セルトレイを利用した簡易なオオムギ雲形病抵抗性圃場検定法


[要約]
供試系統をセルトレイであらかじめ養成し、オオムギ雲形病発生圃場に直接設置することにより圃場抵抗性を評価できる。本検定法は多雪年の雪害が回避できるとともに、簡易であるため現地発生圃場等多地点での検定が可能となる。

[キーワード]オオムギ、雲形病、セルトレイ、抵抗性、圃場検定

[担当]中央農研・大麦研究北陸サブチーム
[代表連絡先]電話:025-526-3246
[区分]関東東海北陸農業・北陸・水田作畑作、作物
[分類]研究・参考

[背景・ねらい]
オオムギ雲形病菌はレース分化が多様であるため、育成地において主要なレースの圃場検定で抵抗性と評価された系統でも、現地のオオムギ雲形病に対して抵抗性を示すことを確認する必要がある。しかし、育成地では異なるレースの検定圃場を隔離する必要があること、また病原菌の拡散の懸念もあることから、検定できるレース数は限られる。さらに遺伝資源等雪害に弱い品種は多雪年では評価できない。そこで雪害を回避し、現地発生圃場等多地点での抵抗性評価が実施できる簡易な検定法を開発する。

[成果の内容・特徴]
1. 本検定法はK社肥料入り園芸培土を床土として、水稲用育苗箱上に16×8セルの園芸用セルトレイを置き、1セル1粒播種でセル外周は罹病品種、供試系統は縦1列6セルを1系統とする(図1左下)。同じものを2セット養成し、1セットは窓開放系ガラス室で積雪を避けて養成し、2〜3月の融雪期に設置する。また少雪年では気温が高く、根雪期間中のガラス室養成では生育が早まりすぎるため、12月の根雪前にも1セット設置する。病徴が明瞭な登熟中期の5月に1個体ずつ調査し(図1右上)、病原菌拡散防止のため調査後は設置圃場で残さを廃棄する(図1右下)。
2. セルトレイ床土の育苗箱下からは根が十分張っており、設置後のかん水の必要はない。また廃棄はセルトレイから根こそぎ行え、現地圃場への異種混入もない。さらに現地での播種等の労力も必要なく小面積のため、現地の協力も得やすい。
3. 供試系統の圃場検定と本検定法での発病程度には2レースの検定とも有意な相関があり、おおむね系統の罹病反応は一致していることから、本検定法による抵抗性の評価は可能である(図2)。
4. 本検定法は各現地発生圃場においても抵抗性を評価することができる(図3)。北陸・東北地域の優占レースJ-4aの圃場検定で抵抗性を示す育成系統や遺伝資源は、本検定法において新潟県、石川県の現地発生圃場でも抵抗性を示すが、山形県の圃場では罹病する。一方病原性の広いレースJ-7に抵抗性を示す遺伝資源「Almerfelder」と「LIGNEE 185 DE GENBLOUX」は、いずれの圃場でも抵抗性を示す(図3)。

[成果の活用面・留意点]
1. 設置圃場の発病が少発生の場合には十分なデータが得られないことから、発病の前歴や連作等多発生要因の情報に基づいた圃場選定、融雪後では圃場の発病状況を確認する等多発生圃場への設置に努める。

[具体的データ]

(山口修)

[その他]
研究課題名:大麦・はだか麦の需要拡大のための用途別加工適性に優れた品種の育成と有用系統の開発
中課題整理番号:311d
予算区分:基盤、委託プロ(加工プロ3系、水田底力プロ)
研究期間:2008〜2010年度
研究担当者:山口修、伊藤誠治

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