バイオエタノール発酵残渣を化学肥料代替資材とした超多収水稲の栽培


[要約]
超多収水稲「北陸193号」の子実を原料としたバイオエタノール発酵残渣は、全窒素含量が高く、その窒素肥効は速効性である。また、発酵残渣を基肥に施用したときの「北陸193号」の生育・収量は慣行の化学肥料栽培と同程度である。

[キーワード]超多収水稲、北陸193号、バイオエタノール、発酵残渣、化学肥料代替資材

[担当]新潟農総研・基盤研究部
[代表連絡先]電話:0258-35-0826
[区分]関東東海北陸農業・北陸・生産環境
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
超多収水稲「北陸193号」の子実をバイオエタノール製造の原料として利用した場合、原料米の約1/3が発酵残渣となる。そこで、その発酵残渣を「北陸193号」の栽培に活用し物質循環を図ることを目的に、肥料的価値を明らかにし、化学肥料代替資材として活用する。

[成果の内容・特徴]
1. バイオエタノール発酵残渣の全炭素含量は50.2%、全窒素含量は8.5%であり、C/N比は5.9と鶏ふん堆肥やナタネ油かす肥料並みに低い。また、全リン酸は牛ふん堆肥並みに、カリウムもナタネ油かす並みである(表1)。
2. 基肥として発酵残渣を現物あたり255kg/10a(6kg N/10aに相当)施用したときの「北陸193号」の初期生育は、慣行の化学肥料栽培と比べて同程度か良いことから(データ略)、その肥料的効果は速効性であると推察される。また、発酵残渣のpHは3.8と酸性であるが、255kg/10aの施用量であれば土壌pHに与える影響はほとんど無い(表1)。
3. 収穫期の生育および収量は、慣行の化学肥料栽培をした試験区と比べて同程度である(図1図2)。
4. 「北陸193号」の目標収量(800kg/10a)から得られる発酵残渣の量は約270kg/10aであり、基肥施用量とほぼ一致する。
5. 収穫期の茎葉窒素およびリン酸吸収量も慣行栽培と同程度であり(図3)、発酵残渣は化学肥料代替として「北陸193号」の栽培に使用できる。

[成果の活用面・留意点]
1. 新潟県中越地方にある「細粒質グライ化灰色低地土,強粘質(農耕地土壌分類第3次案)」のほ場で、2009年および2010年の2年間、超多収水稲「北陸193号」を栽培した結果である。
2. 発酵残渣施用区は、基肥として発酵残渣のみを化学肥料と同時期に施用。対照区は、基肥として化学肥料をN:P2O5:K2O=6:6:6(kg/10a)施用。その他、水管理や追肥(化学肥料でN=4kg/10aを2回)については両試験とも同様に行い、収穫後の稲わらの鋤き込みはしていない。

[具体的データ]

(新潟県農業総合研究所)

[その他]
研究課題名:水稲の燃料化や飼料化のための超多収生産技術体系の開発
予算区分:委託プロ(多用途水稲超多収)
研究期間:2008〜2010年度
研究担当者:大峽広智、門倉綾子、本間利光

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