畑地に汚泥コンポスト肥料を多量施用した場合のダイズのカドミウム汚染リスク


[要約]
畑地に汚泥コンポスト肥料を多量施用すると、土壌pHが低く推移し、土壌カドミウム含量、ダイズ作物体および子実カドミウム含量が増加する。さらに、4年間連用後施用を中止しても、少なくとも1年は汚染リスクは解消されない。

[キーワード]畑地、ダイズ、汚泥コンポスト肥料、カドミウム、汚染リスク

[担当]新潟農総研・基盤研究部
[代表連絡先]電話:0258-35-0826
[区分]関東東海北陸農業・北陸・生産環境
[分類]行政・参考

[背景・ねらい]
下水汚泥から作られた汚泥コンポスト肥料は、窒素・リン酸の含量が高く、堆肥等に比べて取り扱いが容易であるため、化学肥料の代替資材として各地で製造・配布されており、農耕地への施用量は近年全国で漸増している。しかし、汚泥コンポスト肥料は重金属含量が高く、特にカドミウム(Cd)の土壌や作物体への蓄積が危惧されている。
  そこで、畑地に汚泥コンポスト肥料を多量施用してダイズを栽培した場合の作物体および土壌中のCdの動態について明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 汚泥コンポスト肥料を畑地に多量施用(2tおよび4t/10a)すると、消石灰を施用しても酸度が矯正されず、土壌pHは低く推移する(図1)。Cdは土壌pHが低いほど作物体に吸収されやすいため、汚泥コンポスト肥料の多量施用によりCd汚染のリスクが高くなる。
2. 汚泥コンポスト肥料を4年間多量施用した場合、土壌Cd含量は約1.2〜1.7倍に増加する(図2)。
3. 汚泥コンポスト肥料の施用2年目からダイズ子実Cd含量は高くなる。また、汚泥コンポスト肥料の施用を中止した後1年目もダイズ子実Cd含量は高い(図3)。
4. 汚泥コンポスト肥料の施用量が増えると茎葉のCd含量が増加する(図4)。そのため、茎葉をほ場に還元するとCd汚染リスクはさらに高まることが予想される。

[成果の活用面・留意点]
1. 供試したA汚泥コンポスト肥料は、農業集落排水汚泥肥料(肥料の種類:し尿汚泥肥料)で、B汚泥コンポスト肥料は農業集落排水汚泥発酵肥料(肥料の種類:発酵汚泥肥料)で、いずれも肥料登録があり、Cd他全ての成分で肥料取締法の基準を満たしている。
2. 新潟県農業総合研究所内において、グライ低地土の水田土壌(土性CL)を充填したライシメーターでダイズ「エンレイ」を栽培した結果であり、対照区は化学肥料を2〜3kg N/10a施用した。
3. 供試した汚泥コンポスト肥料のpHは、A汚泥コンポスト肥料が5.2、B汚泥コンポスト肥料が7.7で、いずれも耕深は約15cmである。

[具体的データ]

(新潟県農業総合研究所)

[その他]

研究課題名:1) 汚泥肥料の施用法の確立と土壌への重金属付加の評価
2) 土壌有害重金属類の吸収抑制技術の確立

予算区分:1) 県単事業 2) 県単経常
研究期間:1) 2005〜2006年度 2) 2007〜2009年度
研究担当者:大峽広智、門倉綾子、本間利光

目次へ戻る