農研機構
バイオマス研究センター
食品総合研究所

研究総括(2012年)

研究開発の概要

 2007年度より開始された「地域活性化のためのバイオマス利用技術の開発、稲わら等の作物の未利用部分や資源作物、木質バイオマスを効率的にエタノール等に変換する技術の開発」プロジェクトはこれまで長年に亘り取り組まれてきた農水省のバイオマス変換技術である、バイオマス1,3号機によるガス化発電・メタノール変換技術(Eチーム)、あるいはバイオディーゼル油無触媒メタノール変換技術(Fチーム)の実証段階技術開発と新たに多様な原料を対象にエタノールへの変換を担当するA、B、C、Dチームの6チームとして提案、採択されたプロジェクト課題である。開発のステージが全く異なるE、Fチームはそれぞれ4年、2年をもって初期の目標を達成し、実証規模拡大乃至商業化の段階に移行した。
 エタノール変換に係るA、B、C、DはA、Bが原料からエタノールまでの一貫変換技術開発であり、Cは変換の要素技術開発である、糖化発酵、糖化酵素、発酵酵母改良の改善を期待するテーマから開始されたが、糖化酵素の供給あるいは同酵素給源の改良に注力された。ことにエタノール変換は多様な原料に対する変換技術の確立から繊維質原料の変換技術創出にむけた開発に絞り込まれて最終年度には繊維質原料の変換技術に集中した。Dチームは変換未利用部分の資源循環を別途検討し、三年目にはAチーム改変にあわせて各種資源作物原料からの一貫研究に合流した。
 この間にはI、V、W系開発と連携し資源作物としてサトウキビ、ソルガム、テンサイ、バレイショ、カンショについても総合的な利用の在り方、あるいは繊維質集積課題や原料特性を生かす技術集約に至ることができた。地域活性化の技術開発視点からは農業生産余力に期待する燃料供給とはいえ、生産物の経済性やエネルギーとしての供給特性から食用の資源作物は農地の光エネルギー固定量に限界がある。 未利用資源の活用は資源供給までのLCA配分課題にもよるが通常の経済性配分から現実的である。当該技術の実用性は現在も世界的に見てもコーンあるいはサトウキビの食料農業生産の価格維持によって成立する農業政策である。 非食糧からの第2世代糖化技術はこの5年間の研究投資により1980〜1987年に実施された稲わらからのセルラーゼ糖化によるバイオエタノール生産を目指した通産省/RAPAD研究以降の本格再開となり、遅れてスタートした経産省プロジェクトとともに本格的な研究開発が進行中である。当Pjについても、RAPAD/協和発酵での菌株改良やこの間の長岡技術科学大学森川教授の研究継続を承けつつTrichoderma 酵素の発酵生産技術の進展を大幅に進展させることができた。 また新たな酵素給源としてClostridium 酵素利用(C040)にも実用性の高い展望も見い出すことができ、海外との技術格差の懸念された根幹の要素技術の実用性向上に進展を得た点が特筆される。総じて第一期の成果としては、糖化技術課題として経済的な糖化酵素供給を課題とするものの多様な原料を適切に確保しつつ、組成に見合った変換技術の動員により効果的な糖化、エタノール変換技術を固めた。

(つづき「課題〜展望」を読む)



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研究総括(2012年) 2011年 2010年 2009年 2008年 2007年

研究成果ダイジェスト(2012)
チーム 材料 前処理 糖化 発酵 目標
草本系原料からのバイオエタノール生産統合化技術開発 稲わら、各種資源作物 粉砕、化学 酵素生産、酵素糖化、リアクター開発 C5・C6発酵技術 エタノール開発目標 100円/L
稲わら変換総合技術の開発 稲わら 粉砕/熱水 アクレモニウム酵素等 C5改良
アルカリ蒸解・酵素糖化法による木質バイオエタノール生産技術 木材 粉砕/化学 トリコデルマ酵素等 同時糖化発酵、C5改良
バイオマス変換要素技術の高度化(1) 稲わら、木材 担子菌CBP技術開発
バイオマス変換要素技術の高度化(2) 糖化酵素技術開発
バイオマス変換要素技術の高度化(3) エタノール変換技術開発
バイオマスのガス化およびメタノール、エタノール合成技術 草本・木質 ガス化・化学変換コンバインドシステム
バイオマスガスからのエタノール直接合成システムの開発と実証
所定目標、実証
低コストバイオディーゼル燃料製造技術 廃食用油 無触媒メチルエステル化


バイオ燃料素材サンプル