(更新:2010年08月25日)
研究概要
このプロジェクトの研究内容を紹介します。
概要
ナノテクノロジーは、これまでに工学系の分野で著しく進展しており、カーボンナノチューブなど、従来にない機能を持つ新しいナノ材料の開発がおこなわれ、その一部は産業化されている。このような動きは、食品分野にも波及し、近年になってナノテクノロジーに基づいたナノスケール食品素材開発の動きが進みつつある。ナノスケール食品素材は、体積に対して非常に大きな表面積を持つため、高い物理的・化学的な反応性を有することが期待される。
このような特性は、ナノスケール食品素材の機能性の向上や新たな素材の出現につながり、固体、液体、気体のそれぞれについて新規な食品産業の創出の可能性が期待される。しかしながら、食品素材ナノ粒子に関しては、構造、加工適性、物理特性、製造技術、生体影響などにまたがる体系的な研究がおこなわれた例はなかった。さらに、ナノ粒子の健康への影響についての情報についても、材料系におけるフラーレン、カーボンナノチューブ、金属ナノ粒子等に関するわずかな例しかなく、食品素材ナノ粒子の生体への影響に関する検証や試験研究はこれまで充分におこなわれていない。
そこで、本研究プロジェクトでは、超微粒子加工技術の開発を進め、ナノスケール領域における食品素材の新機能を解明すると同時に、加工適性(加工のしやすさ)と安全性についても科学的に検証することを目的としている。
また、ナノスケール食品素材粒子の評価や機能解析には、従来の技術に加えて、走査型プローブ顕微鏡(SPM)などによるナノスケール計測評価技術や、水動態のナノスケールイメージング技術の応用により、素材本来の水を含んだ状態における表面構造や物性をナノスケールの分解能で計測できる技術を開発し、従来技術による評価手法と総合的に組み合わせて、ナノスケール食品素材粒子の評価をおこなう。
研究内容
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I 食品素材のナノスケール加工基盤技術の開発と生体影響評価
食品素材等を対象にマイクロスケールからナノスケールのサイズの粒子を効率的に製造できる加工技術を開発する。また、開発された素材の粒子サイズの違いが物理化学特性や生体に及ぼす影響を解明する。
I-(1) 食品素材のナノスケール加工基盤技術の開発(チームリーダー:中嶋光敏)
I-(2) 食品素材の物理化学的特性・加工適性等の解明(チームリーダー:市川創作)
I-(3) 実験動物等を用いた食品素材の体内動態評価(チームリーダー:山中典子)
I-(4) 食品素材の品質安定性の解明(チームリーダー:椎名武夫)
II 食品素材のナノスケール評価技術の開発と新機能の解明
従来の手法では解析困難なナノスケール特有の構造・物性を計測・評価する技術を開発し、ナノスケールにおける新機能を解明する。
II-(1) 食品素材のナノスケール評価技術の開発(チームリーダー:杉山滋)
II-(2) ナノテクノロジーによる食品素材の新機能解明(チームリーダー:中西友子)