コラム
米びつ害虫の勘違い
私達は見えないものは存在しないと考えがちです。それが原因で勘違いをすることもあります。米びつ内に発生する虫の代表である、コクゾウムシとノシメマダラメイガの関係もその一例です。
年に一度、食品総合研究所の一般公開が開催され、多くの方々で賑わいます。そこで貯穀害虫の実物展示をする際、私達はコクゾウムシの容器とノシメマダラメイガの容器を別々に用意します。すると、容器を指して「この虫がこの虫になるのよね」という質問をされる方がいます。「いえいえ、この2種類は全く別の虫ですよ」とお答えするのですが、「コクゾウムシが成長するとノシメマダラメイガになる」と勘違いされている方は案外多いのです。
はじめは驚いたのですが、改めて考えてみると理解できないことではありません。なぜなら、米びつ内で虫を発見したとき、コクゾウムシの黒い成虫とノシメマダラメイガの飛び回る成虫は非常に目立ちます。それに比べ両者の卵や幼虫は小さく目立たないのでなかなか気づきません。米びつ内にいた形の違う虫を、同じ種類の幼虫と成虫に結びつけてしまった結果なのです。そこでもう一度、コクゾウムシとノシメマダラメイガの生態を確認してみましょう。
コクゾウムシは3ミリ程度の小型の甲虫で、お米の中に卵を産み、幼虫はその中で成長しさなぎとなって成虫になり、内側から食い破って外に出てきます。幼虫も成虫もお米を食べます。卵、幼虫、さなぎはお米の中ですから私達は見ることができません、成虫だけがある日突然わいたように見えるのです。
ノシメマダラメイガは1センチ程度の蛾で、お米の外側、周りに卵を産みます。幼虫はお米の外側から胚乳部分やぬか層を食べ、糸で繭を作ってさなぎになり、成虫が羽化します。卵は0.5ミリ、孵化した幼虫は2ミリ程度の糸くずのようで、色はお米にそっくりですから、よく注意しないと気づきません。卵や繭の中のさなぎは見えにくいですが、幼虫、成虫は見ることができます。成虫はお米を食べることはありません。
米びつ内に虫を発見したとき、「よく観察しましょう」というのは無理な相談かも知れません。しかし、相手を良く知ることはその防除のための近道です。あなたの発見した虫はコクゾウムシでしょうか、それともノシメマダラメイガでしょうか?
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更新日:2019年02月19日