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コラム

2012.06.21 宮ノ下明大
津波被災地でのハエ類の大発生と防除

東日本大震災により東北地方を襲った大津波は、多くの魚類貯蔵施設、飼料や玄米の貯蔵倉庫を破壊し、大量の魚介類や穀物が野外に流出しました。今回のコラムでは、最近発表された論文を参考に、津波被災後に起こった主なハエ類の大発生の経緯を紹介したいと思います。

5月に被災地の気仙沼市、石巻市を調査した害虫防除関係者は、散乱している腐敗した魚を裏返すと大量のオオクロバエの幼虫がいることを確認しました。これは、1ヶ月後にはハエが大発生することを意味し、これまでにない大規模な防除が必要なことが予想されました。


オオクロバエ
オオクロバエ
体長:10~12mm丸みを帯びた大型の青黒色のハエ

6月になり予想通りオオクロバエ成虫が大発生し、この時期の魚類の腐敗臭はひどいものだったようです。地元住民はこのハエを「セミのようなハエ」と呼んでいたそうです。しかし、散布された殺虫剤による減少や、夏になると山地に移動する生態を持つことから、7月には市街地からその数は減少しました。


クロキンバエ
クロキンバエ
体長:8~10mm黒みがかった緑色のハエ

7月になって増加したのはクロキンバエでした。岩手県の魚類冷凍倉庫付近では、粘着紙を用いたトラップに20分で2,364頭、宮城県の湾岸地帯の瓦礫では、2,564頭が捕獲され、その発生数は凄まじいものでした。


イエバエ
イエバエ
体長:6~8mm灰黒色のハエ

7月の中旬にはイエバエが大発生しました。放置された玄米が発酵し、植物性タンパク質を好むイエバエの餌になったようです。 クロバエやキンバエに比べイエバエは屋内に侵入する傾向が強く、避難所の食堂施設のトラップには1日80頭以上捕獲され、住民には大きなストレスになったと思われます。


このように被災地を襲ったハエの大発生は、異なる複数の種類によって構成されていました。7月下旬になると、これらのハエの発生は、殺虫剤の効果と餌となる有機物の分解が進み沈静化がはじまり、8月中旬には人家付近のハエの密度は急激に低下していきました。


津波被災地に大発生した主なハエ類の発生期間
津波被災地に大発生した主なハエ類の発生期間

今回のような大規模なハエ防除は、とにかく成虫の数を減らすための殺虫剤散布が中心となりました。陸上自衛隊や自治体の対応と共に、実際の殺虫作業はNGO組織から支援を受けた日本ペストコントロール協会の各地の会員(害虫駆除業者)の貢献が大きく、5月中旬から10月下旬までに、延べ9,000人/日が作業に当たりました。ハエが媒介する感染症の流行が心配されましたが、幸いなことに迅速な害虫防除作業が行われ、衛生上大きな問題になることはありませんでした。

津波によって野外に散乱した大量の有機物は、ハエ幼虫によって驚くほど速いスピードで分解処理されました。分解者としての昆虫の力を見せつけた事例でもあったのです。




 
参考文献

  • 橋本知幸ら(2012)震災後の石巻市内におけるハエ類成虫の捕獲成績.衛生動物63(1):55-58.
  • 葛西真治・小林睦夫(2012)東北の津波被災地で大発生した衛生害虫の写真による記録.衛生動物63(1):59-69.
  • 田原雄一郎ら(2012)東北被災地におけるハエ類の大発生とその防除.衛生動物63(1):71-83.
  • 安富和男・梅谷献二(1995)原色図鑑 改訂衛生害虫と衣食住の害虫.全国農村教育協会.



 
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