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コラム

2012.08.31 宮ノ下明大
ノシメマダラメイガは、なぜ、どのように動物体内に侵入したか

前回のコラムでは、食品害虫の代表種であるノシメマダラメイガがインコとネコの体内に侵入した事例を紹介しました。論文では、これら動物体内になぜ、どのように幼虫が侵入したかは不明であるとしています。

ノシメマダラメイガ幼虫は様々な食品包装に侵入し、混入異物として問題になります。食品包装に対する幼虫の侵入経路を調べた経験から、動物体内への侵入という行動を私なりに考えてみたいと思います。

動物体内に侵入したノシメマダラメイガ
まずは「なぜ」侵入したかです。ノシメマダラメイガ幼虫は、お米、チョコレート、トウガラシなどを加害する雑食性ですが、動物の組織を積極的に食べる報告はありません。幼虫が食べる目的で侵入した可能性は非常に低いでしょう。

幼虫の動物体内への侵入で注目すべき特徴は、発見された幼虫3頭は全て終齢幼虫だったことです。終齢幼虫は、蛹になる直前の成長した幼虫です。ノシメマダラメイガの幼虫が食品以外から発見される事例は、ほとんどが終齢幼虫なのです。この時期の幼虫は、食べるのを止めて、蛹になる場所を探して歩き回ります。幼虫の多くは様々な隙間に好んで入り込み、糸を吐き繭を作って、蛹になります。米びつ内なら、米粒を糸でつなぎ合わせ繭を作ります(図1参照)。

図1 ノシメマダラメイガ終齢幼虫がつくる繭

今回の幼虫も、動物組織を食べ成長して終齢幼虫になったのではなく、外部から終齢幼虫が蛹になる場所を探して、動物の体内に侵入したのではないでしょうか。

図2 管瓶を用いた終齢幼虫の行動実験
次は「どのように」侵入したかです。終齢幼虫が健康なインコの羽毛やネコの体毛をかき分け、皮膚にたどり着き、噛みついて傷を付けて侵入することは考えにくいことです。私は研究で10年間、終齢幼虫を扱っていますが、噛みつかれた経験は一度もありません。

隙間に入り込む幼虫の生態を考えると、何らかの理由で、皮膚に傷がありそこに入り込んだ可能性があります。ネコの事例は、ネコが虫に刺され、その跡を引っ掻いたため傷ができた、あるいはネコ同士のけんかで傷ができたことがあったのではないでしょうか。論文では、幼虫が組織内を移動したため、ネコが引っ掻き、傷ができたとありましたが、元々別の理由でできた傷を引っ掻いたとも考えられます。

動物の皮膚下は、体液の充満程度や気体の空気の存在など、様々な状態があると思われます。皮膚下に侵入した幼虫の移動が可能かどうか、皮膚下の状態を想定した簡単な実験をしてみました。ガラス製の管瓶に、①幼虫が完全に水没する量の水を入れたもの、②ティシュを入れ幼虫が浸るくらいの水を入れたもの、③全く水を入れなかったもの3つの条件を用意し、それぞれ3頭の終齢幼虫の様子を2日間観察しました(28℃の部屋、図2参照)。

完全に水に浸った幼虫(①)は、酸素欠乏で麻酔がかかり、3分以内に動かなくなりました。24時間後に取り出すと3頭とも既に死亡していました。浸る程度の水がある幼虫(②)は、しばらく動いていましたが、3時間後には動かなくなりました。18時間後に取り出すと5分以内に3頭とも再び動き出しましたが、浸る程度の水に戻すと動かなくなり、2日後には3頭とも死亡していました。全く水のない幼虫(③)は、瓶内を動き回り、2日後には糸を吐き、繭を作ろうとしていました。

簡単な実験ですが、幼虫は水の中では全く動けないこと、水に浸らない状況であれば1日程は生きているが、ほとんど動けないことが分かりました。


私の考え
皮膚下で幼虫が動くためには、液体に長時間浸らない環境が必要なようです。ネコの事例では、傷口に侵入した幼虫は、傷口の細胞からしみ出た液体や血液等にトラップされて短時間で死亡したと思われます。

インコの事例では、生きた幼虫が脳で発見されましたが、論文にはインコに目立った外傷は報告されていません。終齢幼虫が、頭部にある隙間から侵入したとすると、最も容易に脳にたどり着ける位置にある鼻や耳の穴である可能性があります。そして、侵入した体内で液体につかることなく、組織の間隙を移動して、脳まで到達したことになります。この考えが正しければ、実際にインコの頭蓋骨の中で、このような経路が存在するのでしょうか?

ノシメマダラメイガが動物体内から発見される非常に希な事例は、終齢幼虫が蛹になる場所を探し歩き回る行動の延長にあるものと私は考えています。





 
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