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コラム

2013.4.15 宮ノ下明大
本当は怖いコクゾウムシの幼虫


コクゾウムシは、コメ1粒から1匹の成虫が羽化するのが普通です。卵はコメの内部に産みつけられ、孵化した幼虫は、内部を食べて蛹になり、成虫になってコメの外部に出てきます。幼虫はコメの家に守られてぬくぬくと生活しているように見えます。しかし、それは私達の思い違いなのです。今回のコラムでは新垣・高橋(1982)の論文から、コメ粒という密室で本当は何が起こっているのかを紹介したいと思います。
コクゾウムシ

コクゾウムシはコメ1粒に何個の卵を産むのでしょうか。30粒の玄米に1匹の雌成虫を2日間産卵させて調べてみました。その結果、産卵された粒とされていない粒を区別することなく、ランダムに産卵することが分かりました。成虫の密度が高ければ1粒に複数の卵が産卵されることになります。この実験では、1粒に最高3個の卵が見つかりました。

コメ1粒に複数の卵が産みつけられても、1匹しか成虫になれないのはなぜでしょうか。これから、以下の3つの仮説について確かめてみましょう。
米1粒から成虫は1匹

仮説1
【仮説1】
1粒のコメには1匹が成虫になれる程度の栄養しかない。

コクゾウムシの発育に必要な最低量のコメ量を調べるために、粉砕した玄米に水を加えて成形し、様々な重量の人工米を作りました。人工米は、4、5、6、7mgと、9mgからは2mgおきに31mgまでの16種類です。発育実験の結果、1匹が発育可能な人工米の最小重量は5mgでした。通常の玄米1粒の重量は約22mgなので、コクゾウムシは1粒で4匹は発育できそうです。ただし、22mg以下では、量の減少に伴い体重や体長は減少し小型になりました。1粒から1匹なのはコメの量の問題ではないのです。


仮説2
【仮説2】
幼虫が発育阻害物質を出している。

既に1匹の成虫が発育した食べ残しの玄米に対して、新しく産卵させても、成虫まで発育することがわかりました。このことから、玄米内に幼虫が発育阻害物質を分泌したため、他の幼虫が育たず1匹になるのではないと思われます。発育阻害物質は発散しやすく、食べ残しの玄米には残りにくいのかもしれません。そこで、半分に1卵ずつ含むように割った玄米半粒の間に、薄い網で仕切りをしたあと再び1粒に貼り合わせて幼虫の発育をみました。この状態は、幼虫同士は接触せず、幼虫が発散しやすい発育阻害物質を出せば、網を通してもう1匹の幼虫に作用するはずです。結果は、それぞれ半分から1匹が成虫になりました。幼虫が発育阻害物質を出している可能性は低いようです。

仮説3
【仮説3】
幼虫同士が殺し合い1匹だけが生き残る。

人工米に卵を多数産卵させ、1粒に1卵から5卵まで含んだ条件を用意しました。毎日、各条件の人工米を一定数取り出して、幼虫の生存数を調べてみました。すると、卵の密度に関係なく、2齢幼虫の時期に最も生存率が低くなり、ほとんどがこの時期に1匹になってしまいました。

1粒1匹の理由は、幼虫同士が殺し合い、勝者が1匹生き残ることだったのです。コメ粒という密室は、本当は怖いことが起こっている現場なのです。



 
参考文献
  • 新垣則雄・高橋史樹(1982)米粒中におけるコクゾウの幼虫個体数制御機構 Kontyu, Tokyo,50:588-598.



 
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