【豆知識】

コラム

ぜんそく発作のアレルゲンとしてのチャタテムシ

2014.07.31 宮ノ下明大

 

室内のゴミを掃除機で吸引してどんな生物がとれるか調査をしてみると、ダニと並んでたくさん採れるのがチャタテムシの仲間です。最近は室内のアレルゲンとして注目されているようです。

Fukutomi et al.(2011)によると、日本のアレルギー性ぜんそくの大人の患者185人のうち22%がヒラタチャタテに対するIgE抗体を持っていました。この頻度は、ヤケヒョウヒダニ、カイコガの翅、イエバエに次ぐ高さでした.また、他の昆虫類アレルゲンとの交差反応性は低く、ヒラタチャタテがもつ特異的なアレルゲンタンパク質があることがわかりました。このことは、日本人のアレルギー性のぜんそくを持つ方の20%くらいは、ヒラタチャタテがアレルギー源となっている可能性を示しています。

ヒラタチャタテ
ヒラタチャタテ

ヒラタチャタテは、カビを食べるとよく繁殖することがわかっています。室内に湿度の高い環境があれば、そこに発生したカビを食べて繁殖できるのです。また、食品害虫としても知られ、小麦全粒粉を食べて繁殖することができ、製粉工場の主要な害虫です。
室内にチャタテムシが大量に発生すれば、死骸等が大量に空気中に漂い、長期間大量に吸っていれば、その抗体が体内で増えて、アレルギー反応を起こすかもしれません。そうなれば、アレルギー性のぜんそく発作が心配されます。

カビや小麦全粒粉などに繁殖
カビや小麦全粒粉などに繁殖

チャタテムシの発生を防ぐにはどうしたらいいでしょうか。まずは、カビが生えるような湿度の高い環境を作らないこと、湿度が60%以下になれば、チャタテムシの発生は抑えられます。また、掃除機でゴミを吸い取り、掃除(死骸除去や餌の除去)を徹底することです。同じようにして、ダニの発生も抑えられますので、チャタテムシ対策用に新しい方法が必要になることはありません。 ヒラタチャタテがアレルゲンとなることを聞いて、過度に怖がる必要はありません。チャタテムシが1匹もいないという環境を作る必要はないと思います。掃除をしっかりしていればチャタテムシアレルギーになる可能性は低くなるのです。
さて、もし食品に大量にヒラタチャタテが発生し,それを誤食した場合、健康被害があるでしょうか?ヒラタチャタテ1,250匹が入った天ぷら1個を、昼食時に3日間連続して、ダニアレルギーを持たない成人8名に食べてもらう実験をしました。食べる前と後に、体重、血圧、血液検査、医者の問診をした結果、すべての人に体調の変化は認められませんでした(渡部ら,2007)。

実験の結果、体調の変化は認められない
実験の結果、体調の変化は認められない

将来、チャタテムシアレルギーの頻度が増えるかもしれません。そうならないために、室内に発生するチャタテムシに対する正しい知識と対策が必要です。

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参考文献

  • Fukutomi,Y,Y. Kawakami, M. Taniguchi, A. Saito, A. Fukuda, H. Yasueda, T. Nakazawa, H. Nakamura and K. Akiyama (2011) Allergenicity and cross-reactivity of booklice (Liposcelis bostrichophila): a common household insect pest in Japan. Int Arch Allergy Immunol. 157: 339-348.
  • 渡部玄・富田哲司・佐野千寿子・今村太郎・宮ノ下明大(2007)小麦粉に混合したヒラタチャタテの摂取における体調への影響.家屋害虫 29: 49-53.
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更新日:2023年10月06日