コラム
ノシメマダラメイガを飼育してみよう!
先月、日本農業新聞から子供向けにノシメマダラメイガを飼育し、観察するポイントについて取材を受けました。いつも研究用に飼育していますが、飼育観察という面から、改めて考えてみたいと思います。
観察しやすい大きさか
卵は白色の楕円形で長径0.5ミリなので、肉眼での観察には向きません。孵化した幼虫の体長は約2ミリで、白いイモムシです。幼虫が5ミリほどに成長すれば、観察しやすいでしょう。終齢幼虫は糸で繭を作りさなぎになります。成虫は、体長約1センチで、地味なのでアゲハチョウやモンシロチョウのようなインパクトはありません。
餌は何がいいのか
手軽に用意できる餌としてはお米です。玄米でも白米でもいいですが、幼虫にとっては、玄米の方が栄養的に優れているので、早く発育し、成虫になる確率も高くなります。夏であれば約1ヶ月で成虫になります。成虫は餌をとらず10日程で死亡します。ナッツ類でも発育しますので、ロースト・アーモンドはいいかもしれません。過去のコラムで、チョコレートでの発育を紹介していますが、成虫になるまで時間がかかるので、観察には不向きです。
何が観察できるのか
餌が玄米の場合、幼虫は最初に胚の部分を食べて、その後外部の糠層を食べていく様子を見ることができます。透明な飼育容器で飼育すると、底から見たときに顆粒状の糞が成長と共に増えるのがわかります。卵から成虫に変化していく変態の過程を観察することは、昆虫飼育の醍醐味です。
世話いらず
普通、イモムシを飼育する際には、その餌を補充することが大変な作業になります。しかし、ノシメマダラメイガは、玄米でもアーモンドでも、成虫まで餌を代える必要はありません。カビが発生することもあまりありません。
成虫を採集するには
まず、成虫の写真を見てその模様を覚えましょう。7、8月になると、成虫は夕方から夜にかけて野外で多数飛んでいます。夏に部屋の中に侵入する小さな蛾は、ノシメマダラメイガの可能性があるので、採集するといいでしょう。成虫は頼りなくパタパタと飛ぶ感じです。壁などに止まったときに、小さな容器をかぶせると採集できます。もし、雌を1匹でも採集できれば、餌を入れた容器に投入するだけで、十分な数を飼育できます。野外を飛んでいる雌はすでに交尾済みで、多数の卵を産むからです。
子供たちにとって昆虫飼育は魅力的な遊びだと思います。娘は保育所でカブトムシの幼虫を飼育しています。今はさなぎになったようで、成虫が出てくるのを心待ちにしています。「次は、ノシメマダラメイガの飼育はどう?」と提案するつもりです。
参考文献
- 2015年5月16日付 日本農業新聞 8、9面 貯穀害虫ウォッチング
関連情報
- 図鑑:ノシメマダラメイガ
更新日:2019年02月19日