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コラム

2015.07.23 宮ノ下明大
夜間に木に登るクロゴキブリ

ゴキブリは家屋内だけではなく、私たちの周辺の庭や公園に生活しています。今回のコラムでは、クロゴキブリの野外での生態を調べた論文(Appel and Rust, 1986)を紹介します。

クロゴキブリ成虫
この論文は、7月にアメリカのテキサスの都市部の庭で、約300匹のクロゴキブリの行動を調査したものです。


【生活スケジュール】
 成虫は、雌では19.6時間、雄では16.5時間、1日の大半は隠れ場所で休息しています。夜になって動き出し、食事をした後、交尾相手を探すなどして、隠れ場所に戻ります。幼虫では、休息や食事の時間が長くなります。
 日没後2時間は見られず、20時位から雄成虫と若齢幼虫が現れ、1時間後には雌成虫と中齢、終齢幼虫が現れます。出現数は0時でピークに達した後、徐々に減少し、5時には隠れ場所に戻りました。最後までうろうろしているのは雄成虫です。

夜間における♂成虫の野外での観察匹数

【成虫の求愛行動】
 雄は樹木の高い場所(平均2m、最高6m)に登り、頭を下に向け、前脚を大きく開き、触角を45度に上げるという特徴的な姿勢をとります。これはパーチングと呼ばれる交尾相手を探索する行動であり、1日の約20%(5時間)のあいだ見られました。 
 雌は低い場所(平均0.8m、3m以下)で、翅を上げて性フェロモンを腹部末端から出すコーリングと呼ばれる行動に、1日の約8%(2時間)を費やしていました。
 この論文では、交尾の記述はなく、野外で交尾を確認するのは難しいようです。もし、交尾するだけであれば、隠れ場所で十分で、わざわざ夜間に樹に登る必要はないと思われます。なるべく血のつながりの薄い相手を選び、遺伝的多様性を維持するためかもしれません。

野外でのクロゴキブリ成虫の1日の活動内容と時間

【日本ではどうか】
 中野敬一氏は、2014年の4月から12月に月1回の頻度で、東京都港区のサクラ4本に粘着トラップを設置し、クロゴキブリを捕獲しています(中野,2015)。地面、樹木の高さ1m、2mで調べたところ、2mで最も多数の個体が捕獲されました。全捕獲数は61匹(成虫20匹、幼虫41匹)でした。この調査では、雄が雌よりも高い位置にいるという傾向はなかったようです。

サクラの木に設置した粘着トラップに捕獲されたクロゴキブリの匹数


夏の夜の樹木は「昆虫の木」  アメリカのテキサスや日本の港区の調査から、野外のクロゴキブリは、夜間に樹木に登っていると考えられます。特に日本の夏の夜の樹木は、セミ、コガネムシ、バッタ、ゴキブリなど昆虫類が生息する「昆虫の木」と言えそうです。

夏の夜の樹木は「昆虫の木」



 
参考文献
  • Appel, A.G. and M. K. Rust(1986)Time-activity budgets and spatial distribution patterns of the Smokybrown Cockroach, Periplaneta fuliginosa (Dictyoptera: Blattidae) Ann. Entomol. Soc. Am. 79: 104-108.
  • 中野敬一(2015)サクラ並木におけるクロゴキブリの分布について 都市有害生物管理学会第36回年次大会 講演要旨集
謝辞 中野敬一氏には、文献(Appel and Rust, 1986)を紹介いただきました。お礼を申し上げます。



 
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