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コラム

2016.01.04 宮ノ下明大
野外の花や麦に飛来するコクゾウムシ

 前回のコラムでは、コクゾウムシは秋季に穀類貯蔵庫から野外へ移動し、石や木片の下で集団越冬することを紹介しました。越冬を終えたコクゾウムシは、春季に貯蔵庫へ戻り繁殖します。しかし、一部のコクゾウムシは、春季に野外の花や麦に飛来することが記録されているのです。

コクゾウムシは貯蔵庫と野外を行き来して生活しています
コクゾウムシは貯蔵庫と野外を行き来して生活しています

【マーガレットで吸蜜する成虫】
訪花し吸蜜したコクゾウムシは繁殖能力が高まります
訪花し吸蜜したコクゾウムシは繁殖能力が高まります
吉田ら(1956)は、5月に宮崎県でムギやナタネが栽培される丘陵畑作地帯では、サワフタギ、マルバウツギ、宮崎市内ではマーガレットの花にコクゾウムシ成虫を発見しました。特にマーガレットでは、コクゾウムシ口吻を蜜腺につきさし体を逆立てて盛んに吸蜜していることを観察しています。訪花した植物の種類は10種類以上で、コクゾウムシは特定の花ではなく5月頃開花する多くの花を訪れるそうです。しかし、調査中に咲いていたヤマツツジ、ジャガイモ、園芸用バラの花には見つかりませんでした。

同じ時期に、花から吸蜜したと思われるコクゾウムシと精米所から採集したコクゾウムシの産子数を比べたところ、吸蜜した場合の方が次世代の数が多い傾向がありました。雌は吸蜜することで繁殖能力が増すと考えられます。

6月の後半に再び調査したときは、花はたくさんあってもコクゾウムシは1匹も発見出来ませんでした。越冬を終えたコクゾウムシの一部は、周囲の花を訪れ吸蜜して栄養を得たあとで、貯蔵庫に移動する可能性があります。


【麦畑に飛来し産卵する成虫】
麦穂に飛来したコクゾウムシは小麦に加害、産卵します
麦穂に飛来したコクゾウムシは小麦に加害、産卵します
桐谷ら(1957)は、5~7月に宮崎県、大阪府、三重県、奈良県の麦畑でコクゾウムシ成虫の調査を行いました。宮崎県では58圃場の内18圃場でコクゾウムシが発見されました。コクゾウムシは集中的な分布を示し、ある圃場では1穂あたり4~5匹も発見されるのに対し、隣の圃場ではほとんど見られないことも多かったようです。

大阪府でも、宮崎県に比べると密度が低いものの飛来したコクゾウムシが発見されました。三重県、奈良県では、収穫前の麦畑から直接麦穂を採集して、室温に置き羽化するコクゾウムシの有無を確認したところ、産卵されていることがわかりました。

 コクゾウムシの麦畑への飛来により、収穫前の麦穂が加害され収量が減少する場合や、産卵された小麦が収穫され、貯蔵中の発生源となる場合が考えられるでしょう。

【つくばでは飛来するのか】
 コクゾウムシが春季に花や麦穂に飛んでくる現象は、日本で普遍的な現象でしょうか?私の住む茨城県つくば市周辺では、毎年気にしているのですが、花や麦穂でコクゾウムシを見たことはありません。紹介した論文でも近畿地方では宮崎県に比べその数は非常に少なくなっています。おそらく関東以北ではとても頻度の低い現象で、その原因は十分に飛翔するには気温が低いのではと思いますが、はっきりとはわかっていません。





 
参考文献
  • 吉田敏治・玉村芳信・河野謙二・高橋幸一・宅万敏和・鳥原嘉夫(1956)コクゾウの訪花について.貯穀害虫の生態学的研究 第1報.宮崎大学学芸学部研究時報1:173-178.
  • 桐谷圭治・松沢寛・新樽仁(1957)日本におけるコクゾウの野外の麦における加害と産卵.防虫科学22:241-247.


 
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