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コラム

2016.04.27 宮ノ下明大
宇宙で暮らす人間とミールワーム

 宇宙における人間の長期滞在で問題になるのは、動物性タンパク質の供給です。限られた空間で、鶏、豚、牛などの家畜を飼育するのは、現実的ではありません。
宇宙で動物性たんぱく質として生産可能なのは昆虫
それに比べて、狭い空間で効率よく繁殖する昆虫類は、タンパク質生産に適しています。前回のコラムでは、カイコの蛹とイエバエ幼虫の事例を紹介しました。今回は、食品害虫として知られるミールワームでの可能性を取り上げたいと思います。

【ミールワームとは】
ミールワームとは
  ミールワームは、チャイロコメノゴミムシダマシという甲虫の幼虫のことをいいます。越冬した幼虫は、春になると蛹になり夏に成虫となります。夏に産まれた卵から孵った幼虫は、精米所、製粉所、畜舎などの穀物粉末を食べて発育し、幼虫で越冬します。食品害虫としては大型の種類で、特に幼虫は体長約3cmになります。  

【ミールワームの栄養的価値】
表1 ミールワームの必須アミノ酸構成( g/100g )
ミールワームの必須アミノ酸構成( g/100g )
人間の食料としてミールワームを考えるなら、その栄養的価値をしっかり調べておく必要があります。
  ミールワームは、人間に必要な必須アミノ酸をすべて含み、その100g のタンパク質に対する割合は、FAOやWHOが示す必要量よりも大部分で高くなっています(表1)。

表2 ミールワームと他の動物肉のたんぱく質と
脂肪の量(乾重量当たり)

ミールワームと他の動物肉のたんぱく質と脂肪の量(乾重量当たり)
ミールワームと他の動物の乾燥重量あたりのタンパク質と脂肪の割合を比較すると、タンパク質ではヤギ、ウシ、トリよりも多く、脂肪では少なくなっていました(表2)。

【宇宙でのミールワームの役割】
図column_999_02.jpgのコメント
図1 ミールワームを取り入れた人工生態系の概念図(Li, et al., 2013を参考)
ガスや水の出入り、蓄積された食料の流れは省略

 宇宙で人間が暮らすための人工生態系1)で、ミールワームの役割を考えてみましょう。その主な構成要素は、人間、小麦、ミールワーム(昆虫)、微生物の共生関係です(図1)。
 小麦は、人間の食物として利用し、ミールワームの餌としない植物体は廃棄物とします。通常人間が利用しない小麦の糠や砕いた茎をミールワームの餌とします。この時に、複数の微生物を混ぜることで餌の質が改善します。  さらに古いハクサイの葉を加えることで、水分とビタミンを補います。発育した幼虫を人間のための動物性タンパク質とします。小麦、人間、ミールワームから出る廃棄物や排泄物は、小麦栽培の有機肥料として利用します。
 将来、人間が宇宙で暮らすとき、地球とそっくりの惑星でない限り、私たちは資源を再生産し、持続可能な地球型の人工生態系を作り上げなければなりません。そのときは、昆虫は害虫ではなく、重要な資源となるかもしれません。

1) 宇宙で人間が生活するための生態系を維持するシステムを、生物再生生命維持システム(Bioregenerative life support systems: BLSS)と呼ぶそうです。このBLSSとは、高等植物、動物、微生物間の複雑な共生関係で構成された人工生態系を意味しています。


 
参考文献
  • Li, L, Z. Zhao and H. Liu (2013) Feasibility of feeding yellow mealworm (Tenebrio molitor L.) in bioregenerative life support systems as a source of animal protein for humans. Acta astronautica, 92, 103-109.


 
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