【豆知識】

コラム

湿度とノシメマダラメイガ

2016.06.29 宮ノ下明大

 

6月は梅雨の季節です。洗濯物が乾かないので、我が家では室内で除湿機が大活躍です。私たちは高い湿度を不快に感じますが、昆虫にとって、高湿度はどんな影響を与えるのでしょうか?ノシメマダラメイガの発育を例にして調べてみました。

ノシメマダラメイガと梅雨
ノシメマダラメイガと梅雨

乾燥に弱い幼虫

温度25℃で38~75.5%の6種類の湿度で、ノシメマダラメイガを米ぬかで飼育し、発育への影響を調べました(井村,1981)。その結果(図)を見ると、最も湿度の低い38%では発育しませんでした。43%でも生存率は10%で、発育日数も70.5日と長く、乾燥はノシメマダラメイガの発育にとって過酷な状況と考えられます。生存率は湿度50~75.5%ではあまり変わりませんが、発育日数は湿度が高くなると短くなりました。

生存率と発育日数

湿度80%

さらに高い湿度ではどうでしょうか?温度27℃で湿度70%と80%で、トウモロコシ9品種を餌にノシメマダラメイガの発育を調べた例があります(AbdelーRahmanら,1968:表)。発育日数をみると、品種間で違いはなく、30~35日に含まれますが、いずれも湿度80%の方が短くなりました。成虫羽化率では、品種間で大きな差が見られますが、やはりすべての品種で湿度80%では高くなっていました。私たちには不快と感じる湿度80%は、ノシメマダラメイガの発育には適しています。

羽化率と平均発育日数

幼虫は水分を奪われやすい

幼虫の体は、成虫に比べて柔らかく毛の数も少なく、水分が奪われやすいと思われるので、乾燥の度合いは幼虫の生死を左右すると考えられます。幼虫の発育にとって高湿度は非常に有利な条件なのです。とくにノシメマダラメイガのような餌の表面をかじる幼虫は、常に周囲の湿度にさらされているため影響が大きいのです。

卵や蛹はどうでしょうか。湿度の高低は孵化率や羽化率にほとんど影響を与えないのです(井村,1981)。卵の表面は堅い殻(卵殻)で覆われ、蛹も体表面は硬くなり、水分を保持しやすく、周囲の湿度の影響を受けにくいと思われます。

水分が奪われやすい幼虫

梅雨は幼虫

実際には、幼虫はなるべく乾燥しない環境を好んで生活しているはずです。私は、つくば市のマンション周辺で発生したノシメマダラメイガの成虫をトラップで調査しています。その結果によると、湿度の高い梅雨の時期は、ちょうど幼虫が発育する時期に重なっています。梅雨が終わる頃、新しい成虫が現れるのです。

梅雨頃は幼虫、梅雨が終わる頃には成虫
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参考文献

  • 井村 治(1981)4種のマダラメイガに及ぼす湿度の影響.食総研報38:106-114.
  • Abdel-Rahman, H. A., A. C. Hodson and C. M. Christensen (1986) Development of Plodia interpunctella (Hb.) (Lepidoptera, Pyralidae) on different varieties of corn at two levels of moisture. J. Stored Prod. Res, 4: 127-133.
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関連情報

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更新日:2019年02月19日