【豆知識】

コラム

熱帯からやってきたガイマイツヅリガ

2016.09.06 宮ノ下明大

 

ガイマイツヅリガは開張が25mm前後で、前翅は茶褐色から赤褐色、明瞭な斑紋が表れないものから、翅脈に沿って黒褐色の筋が表れるものなど、かなりの変異が見られます。研究室で飼育しているガの幼虫の中で最も大きい種類(体長:20mm以上)です。熱帯から亜熱帯にかけて広く分布していますが、日本では沖縄県のみで定着が確認されています。

ガイマイツヅリガ成虫と幼虫
ガイマイツヅリガ成虫と幼虫

飼育している個体は沖縄県から採集されたものです。過去に東京の深川倉庫や鹿児島県で発見されていますが、一時的な発生と考えられていました。

神奈川県の製造工場で確認

最近、木村ら(2016)によって、ガイマイツヅリガが神奈川県の製造工場で2013~15年に継続的に発生したことが報告されました。海外から輸入されたものに混入して侵入したと考えられます。フェロモントラップを用いた個体数調査では、2013年は8月にピークがあり、同年12月から2014年3月は捕獲されませんでした。冬季は工場内で幼虫が越冬していると考えられます。これらのことは、本州でもガイマイツヅリガは継続的に発生が可能なことを示しており、その発生に注意する必要があります。

製造工場でのガイマイツヅリガ成虫の捕獲調査
製造工場でのガイマイツヅリガ成虫の捕獲調査

ガイマイツヅリガの発育日数

日本ではなじみ薄いガイマイツヅリガですが、過去の研究によると広い食性範囲を持つことがわかっています。その発育について知ることは農産物や食品の管理に役立つでしょう。

ノシメマダラメイガと比較して紹介します。
ソルガムを餌にして25,30,35℃で発育日数を調べた結果、卵が孵化してから成虫になるまで、25℃では約40日、30,35℃では約30日でした(Shazali and Smith,1986)。ノシメマダラメイガでは、35℃になると発育に高温障害が起こりますが(コラム:夏バテするノシメマダラメイガ参照)、ガイマイツヅリガでは高温の影響が少ないことは、熱帯に起源があるからなのでしょう。

製造工場でのガイマイツヅリガ成虫の捕獲調査
ガイマイツヅリガのソルガムでの発育日数
Shazali and Smith(1986)より作成

また、30℃でラッカセイ,カカオ,コーン,コメ,ササゲを餌にして発育日数を調べると、ラッカセイ45.4日,カカオ56.3日,コーン45.2日,コメ49.3日,ササゲ43.5日でした(Mbata,1989)。ノシメマダラメイガの発育日数30日前後に比べると、時間がかかるようです。

30℃における各種餌によるガイマイツヅリガの発育日数
30℃における各種餌によるガイマイツヅリガの発育日数
Mbata(1989)より作成

コメに混入する大きな幼虫

ガイマイツヅリガは玄米を外側から食べ、被害を受けた玄米はまるで精米したようになります。日本(沖縄を除く)でお米に混入する主なガ類の幼虫は、ノシメマダラメイガの含まれるメイガ類あるいはイッテンコクガでした。特に20mmを超える白い幼虫はイッテンコクガと判断する目安でしたが、今後ガイマイツヅリガを候補に考える必要があるかもしれません。

玄米とガイマイツヅリガ幼虫
玄米とガイマイツヅリガ幼虫
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参考文献

  • 木村悟朗・末松由宏・生田 秀・谷口将史・宮ノ下明大・富岡康浩・谷川 力(2016)神奈川県の製造工場におけるガイマイツヅリガCorcyra cephalonicaの発生.Med. Entomol. Zool. 67: 83-85.
  • Shazali, M. E. H. and R. H. Smith (1986) Life history studies of external feeding pests of stored sorghum: Corcyra cephalonica (Staint.) and Tribolium castaneum (Hbst). J. Stored Prod. Res. 22: 55-61.
  • Mbata, G. N. (1989) Studies on some aspects of the biology of Corcyra cephalonica (Stainton) (Lepidoptera: galleriidae). J. Stored Prod. Res. 25: 181-186.
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関連情報

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更新日:2018年8月20日