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コラム

2017.05.10 宮ノ下明大
乾燥食品で発育するイモムシの生き方


【ダーウィンのスズメガ】
図column_999_01.jpg写真のコメント
「ダーウィンのスズメガ」
成虫は30cm程の長い口を持つ
  マダガスカル固有のスイセイランは、長さ30cmもの極端に長い管状の花をもっています。『種の起源』で知られるチャールズ・ダーウィンは、この植物を受粉させる生物がいるはずだと予測しました。実際にこの花の受粉に関与する蛾が見つかったのは80年も後になってからでした。

 上野の国立科学博物館で開催されている「大英自然史博物館展」で見た「ダーウィンのスズメガ」の標本は見事なものでした。このキサントパンスズメガは、長さ30cm程のとても長い口をもつ蛾で、ダーウィンが予測した生物だったのです。

 長い管状の花とその形に適応した長い口を持つ蛾の進化は、ダーウィンが主張した進化のメカニズムである自然選択の事例として有名な話です。実際にその長い口をみると、自然のしくみはすごいな、と釘付けになりました。
【カップ麺製品に混入した幼虫】
 さて、私の研究対象のノシメマダラメイガは、見た目はふつうの蛾です。しかし、それは長い進化の歴史的産物であるという点では「ダーウィンのスズメガ」と同じなのだと思います。最近、それを感じたのは、カップ麺製品を餌としてノシメマダラメイガの発育を調べたときでした。

 カップ麺製品にはいろいろなタイプがありますが、今回の話は、油揚げ中華麺、乾燥野菜、ミンチ肉片から構成されたラーメンです。もし、このカップ麺製品の容器の中にノシメマダラメイガの幼虫が混入したらどうなるでしょうか?乾燥した食品を食べて発育できる幼虫にとって、これらの食材はいずれも餌となります。

 幼虫は自分の発育に最も良い食材を食べ分けている可能性があります。狭い容器の中であれば、各食材を移動して食べることも考えられます。そこで、これらの食材を様々な組み合わせで与えて発育期間を調べ、実際の製品での発育期間と比較することで、幼虫が食べ分けているのか確かめてみました。

【幼虫は食べ分けしていない】
 カップ麺製品を食べで幼虫が羽化するまで、平均で37.7日でした。これは、トウモロコシ、乾燥野菜(キャベツ・ネギ+トウモロコシ)、油揚げ麺を餌とした場合と大きな差はありませんでした。ところが、乾燥野菜+ミンチ肉片の組み合わせの場合は、平均28.1日で羽化し、最も発育期間が短くなりました(表)。

カップ麺製品の食材の組み合わせにおけるノシメマダラメイガの発育
図column_999_02.jpgのコメント
発育日数:孵化幼虫から成虫まで

 もし、カップ麺製品の中で、幼虫が最も発育に有利な食材「乾燥野菜+ミンチ肉片」を食べ分けていたなら、約28日で羽化するはずですが、実際には37日ということは、食べ分けていない可能性が高いのです。

【カップ麺製品と幼虫の生き方】

図column_999_02.jpgのコメント
 考えてみれば、カップ麺製品とノシメマダラメイガの関係が生まれたのは、製品が出現して以降です。 幼虫が複数の食材から発育に最適なものを同時に選ぶという歴史は非常に浅く、幼虫による選択をほとんど受けていないのですから、食べ分けが存在しないのも当然かもしれません。
 むしろ、幼虫は周囲に存在する頻度の高い食材を食べて、とにかく生き残ろうとします。それは、他の種類の幼虫が利用しない乾燥した植物性の腐食物を食べて生き残ってきたノシメマダラメイガの本来の姿なのでしょう。現代のカップ麺製品の中であっても、その生き方は変わっていないのです。

 
参考文献
  • 宮ノ下明大、今村太郎、古井聡、曲山幸生(2017)カップ麺製品の食材の組み合わせがノシメマダラメイガの発育に与える影響、ペストロジー32:7-9.
  • 国立科学博物館、読売新聞社編(2017)74.キサントパンスズメガの1種、p.107、大英自然史博物館展図録,東京.


 
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