【豆知識】

コラム

ドラマに登場したチャタテムシ

2017.12.12 宮ノ下明大

『科捜研の女』とチャタテムシ

ドラマ「科捜研の女」シーズン17(ファイル6:マリコの民泊、2017年11月23日放送)で、発生した殺人事件。民泊していた外国人観光客を壷で殴打して殺した犯人は、割れた壷の破片で腕を切ります。そのときに血が畳に付き、犯人はあわてて側にあったお香に火をつけて、血痕を焦がして隠蔽しました。京都府警の科捜研は、現場の焦げた跡のついた畳を回収します。畳を解体して、その中から犯人の血が付着したチャタテムシを見つけ出しました。虫の体表についた血痕のDNAの配列を調べ、犯人を見事に特定したのです。

小学生の娘と一緒にこのドラマを見ていた私は、チャタテムシが出てきた時には、思わず「おおっ」と声が出てしまいました。多くの視聴者には初めて聞く虫の名前だったかもしれませんが、私にはそれがヒラタチャタテと一目でわかりました。チャタテムシがテレビドラマの脚本に登場するほどメジャーになったことに驚きました。

血痕付きチャタテムシ発見

チャタテムシは家屋内にいる

家屋内のホコリやゴミを掃除機で吸い取って調べると、ダニとチャタテムシが普通に発見されます。チャタテムシの仲間の中でもヒラタチャタテは頻度の高い種類です。民泊の畳で発見されたヒラタチャタテは、畳に発生したカビを食べていると思われます。しかし、チャタテムシの仲間の大部分は野外の樹皮下などで生活しています。

ドラマではよくわからなかったと思いますが、ヒラタチャタテは成虫でも約1mmしかありません。犯人の血痕が畳に落ちた時に、たまたまチャタテムシがいて、その体に血が付いたのです。犯人が火のついたお香を押しつけたときには、その場から移動していたので、お香の火で死亡することもなかったのです。ドラマでも、移動するチャタテムシがCGで描かれていました。

家屋内のホコリやゴミの中にはチャタテムシが発見できる

食品害虫・アレルゲンとしてのチャタテムシ

家屋内のヒラタチャタテは、台所に保管された小麦粉、お好み焼き粉、天ぷら粉などの粉体食品に侵入し、繁殖することがあります。私たちの研究室では小麦全粒粉でこの虫を飼育しています。また、日本人の大人のアレルギー性喘息患者の22%は、ヒラタチャタテに対する抗体を持つという報告があり、アレルゲンとして注目されている昆虫でもあります(過去のコラム参照)。

お手柄は人にあり

今回の場合、チャタテムシに血が付いたことは、科捜研にとっては幸運でした。しかし、この事件解決の一番の決め手は、畳1枚を解体して微少な血痕付きチャタテムシを顕微鏡で探し出した科捜研の粘り強さにあります。これは大変な作業です。微量なDNA分析もすごいですが、私はこの作業に感動したのでした。

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更新日:2019年02月19日