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アレルギー性疾患では、その抗原としては、食物あるいはハウスダスト、 花粉、ペットなど様々なものがあり、皮膚においては、抗原抗体複合体に よる血管透過性亢進により、皮膚炎症を起こしアトピー性皮膚炎などを生 じ、気道粘膜では喘息、鼻腔内ではアレルギー性鼻炎などが起ることが知 られている。よって抗原刺激で誘導される皮膚反応はよりアレルギー皮膚 炎のモデルとしてもっとも近い物と考えることができる。ラットは比較的 抗体産生能が高く、容易に抗体を作ることができるので、アレルギーのモ デルとしても有効である。 1. ラットの免疫 準備 【動物】 ラット(SD、Wistarなど、200g前後、5w雄) 【器具】 注射針、注射筒、メスの刃、動物用バリカン 【抗原】 アルブミンなど(卵白、異種動物、特殊蛋白など) 【アジュバント】 FCA, FIA, ALMなど 操作の実際 【免疫方法】 1. 抗原アルブミン(2mg/ml PBS)とアジュバント(FCA)と1:1で混合し エマルジョンを作る。 2. ラットの背中の毛をバリカンで刈り、このエマルジョンを5カ所に 皮内注射(0.lml, 26G針、lmlツベルクリン注射筒)をする。背中の中 心部は後に皮内反応に用いるため、なるべく縁の方を用いる。 3. 7日後、同じエマルジョンを尾根部に1カ所皮内注射をする(追加免 疫day 7)。 【採血(2〜3日間隔)】 ラットの尻尾にメスの刃(No.10程度)で傷を付け(上部の動脈側)ヘマト クリット毛細管あるいはマイクロピペツタで吸い取る。シールをして遠 心後上清(血清)を採取。 2. 抗体価測定(ELISA) 準備 抗原、1次抗体(血清サンプル)、2次抗体(抗うットIgG抗体-ペルオキシダ ーゼ、測定したいサブクラスのものを用意する)、ELISAプレート、PBS(-)、 Blocking solution(5% BSA, 0.1%NaN3inPBS)、30%過酸化水素水(キット)、 ABTS(基質、キット)、2%シュウ酸 操作の実際 1. 抗原を0.1M NaHCO3, 0.5M NaCl(pH=8.3)のBufferに溶かし50μg/mlの 濃度に調整する。ELISA用の96穴プレートに5μg(100μl)づつ加え、 4℃で3時間静置する。 2. PBSで2-3回洗浄した後、blocking solutionを200μl/well加え、室温 で2時間静置する。 3. PBSで2-3回洗浄した後、血清試料の希釈系列(1% BSA-PBSで2倍希釈系 列を作っておく)を100μl/well加え、室温で1時間静置する。 4. PBSで2-3回洗浄した後、2次抗体(1:2000)を50μl/well加え、室温で 1時間放置する。 5. PBSで2-3回洗浄した後、ABTSを使用直前に溶かし、9:1の割合で30% H2O2を加え、混合し、これをすばやく100μl/well加え、20分静置する。 6. 停止液(2%シュウ酸)を100μl加えて反応を止め、415nmの吸光度を測 定する。 注意 試料や抗体の希釈率は一例であり、最適の希釈率はその都度求め る必要がある。抗体には添付文書に希釈倍率が書いてあるものが多い。 抗体価計算 横軸に希釈率を対数で、縦軸に吸光度をプロットし、最大吸光度の半分 になる希釈度を、その個体の抗体価とする。 3. 皮膚反応 準備 【実験器具】 注射針、注射筒、メスの刃、分光光度計、実験動物用バリカン、解剖 用具など 【試薬】 麻酔用エーテル、ヒスタミン、色素(Direct blueあるいはEvans blue)、 水酸化カリウム、リン酸、アセトン、Tyrode氏液 操作の実際 追加免疫後約1週間で抗体価が上昇するので、この頃のラットを使用する。 1. エーテル麻酔下で、ラットの背部の毛をバリカンで刈る。 2. 約1時間おいた後、エーテル麻酔下で5〜6カ所に皮内に注射する。抗 原は一カ所あたり0.1 ml注射する。上記のヒスタミンによる血管透過 性冗進反応の操作の実際の項参照。抗原濃度は0.1, 1.0, 10μg/mlで 用量依存性を確認できる。試験物質は抗原と混ぜて投与するか(直接作 用)、腹腔内あるいは経口投与(間接、すなわち全身作用)する。 3. 透過性を調べたい時間の20分前に、色素(Direct blueあるいはEvans blue)50mg/kg静脈内投与する。この色素はアルブミンと結合し、組織 に漏れでた色素量を測定すれば血管透過性の指標となる。 4. 一定時間(急性反応では、〜1時間、遅延型では24〜72時間)後脱血死 させ、血液を一部採取したのち、注射部位を切り取る。 5. 切り取った皮膚片を細かく刻み、試験管に入れ、1N KOHを1ml加え、 40℃一晩放置アルカリ分解する。0.6Nリン酸(2.5ml)で中和した後、 アセトンを加え(7ml)、遠心(2000xg, 20℃, 20min)し、上清の吸光度 (620nm)を測定する。 6. 採取した血液は、1700xg, 20℃, 20min遠心し、血清中の色素量を測 定する。 計算方法 透過性の指標としては、血清中の色素量から注射部位に漏出した血清量 を求め20分間での浸出速度として表わす。 参考文献(抗体価測定) 1) Yamaki et al.:“Inhibitory effects of anti-inflammatory drugs on type II collagen-induced arthritis in rats.”Ann. Rheum. Dis. 46 543-548 (1987). (八巻幸二)
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