例えば、抜き取り検査の結果、基準値を超えていると判定されたロットAと基準値以下と判定されたロットBを混合することにより新たなロットCを調製する場合を考えてみます。
ロットの濃度はロットから抜き取ったサンプルの分析値から判断しますのでロットの真の濃度は不明です。分析値にはばらつきがあるためロットの濃度=サンプルの分析値とは言い切れず、ロットの濃度はある濃度範囲(信頼区間)内に存在するとサンプルの分析値から推定することしかできません。
ロットAの分析値をxA、分析値の分散をσ2A、ロットBの分析値をxB、分析値の分散をσ2Bとします。各ロットの分析値の大きさは独立(相関がない)と仮定します。
ロットAをa×100(%)、ロットBをb×100(%)、ただしb=1-a、で混合した場合、混合したロットの分析値の期待値をxC、分析値の分散の期待値をσ2Cとすると
|
xC =
a×xA + b×xB |
|
σ2C =
a2×σ2A + b2×σ2B |
が成り立ちます。
一つのロットから多数のサンプルを抜き取って各サンプルの分析値の平均値をロットの濃度として求めれば、平均値の分布は元の分布にかかわらず正規分布する(中心極限定理)ため、分析値(の平均値)は正規分布するとみなしてロットの濃度の信頼区間を計算できます。しかし、分析値が多数サンプルの平均値でない場合はサンプルの分析値の分布を正規分布と仮定できないこともあります。この場合は正規分布を仮定した信頼区間は目安と考えてください。
以下では分析値の分布は正規分布とすると仮定してロットの濃度の信頼区間を計算します。
|
xC -
k×σ ≦ ロットCの濃度 ≦xC + k×σ |
ここで、kは正規分布の信頼限界です。危険率5%のときk=1.96、危険率1%のときk=2.58を上の式に代入します。
・混合したロットの信頼区間上限が基準値を超えないように配合率を決定する必要があります。
・配合したロットからサンプルを抜き取って分析する場合、サンプルの分析値のばらつきを考慮した信頼区間上限が基準値を超えないか確認します。
例題
皮なしコーンのアフラトキシンの分析値に関する分散をJohanssonら(2000a)のモデル式(154KB
A4サイズ 2ページ)を用いて計算し、アフラトキシン濃度の異なる2つのロットを混合した場合についてサンプル量が1kgのときと5kgのときの信頼区間を計算します。