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トランス脂肪酸Q&A

1)トランス脂肪酸とは?
2)私達はトランス脂肪酸をどのぐらい摂っているのでしょうか?
3)なぜ、最近になってトランス脂肪酸が問題となってきたのですか?
4)トランス脂肪酸の摂取を、どれだけ減らせば安全でしょうか?
5)どのような食品がトランス脂肪酸の摂取源ですか?
6)「植物油を加熱してもトランス脂肪酸はできない」ということになるのでしょうか?
7)日本はアメリカよりトランス脂肪酸の摂取は少ないから大丈夫と言えるのでしょうか?
8)日本でもトランス脂肪酸の摂取に対して強い対策をとるべきではないでしょうか?
9)日本の食品のトランス脂肪酸含量は、海外の製品と比べて低いと言えるのですか?
lO)トランス脂肪酸のうち何を調べているのですか?
11)トランス脂肪酸を摂りたくないが、どうすればよいのでしょうか。
12)BSE、メチル水銀など次々に危ない物が報道されますが、トランス脂肪酸はBSEやメチル水銀と、何かちがう点がありますか?
13) ある植物油の、ある温度におけるトランス脂肪酸の生成を知りたいのですが?

1)トランス脂肪酸とは?

 脂肪酸には、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸があります。不飽和の場合は、炭素鎖が2種類の結合(曲がり方)が可能です。この結合の違いから、不飽和脂肪酸は、シス型とトランス型という2種類に分けられます。私達が摂るトランス脂肪酸で最も多いのは、植物油への水素添加によって生成したものです。水素添加反応は、目的に合う食用油脂を安価に製造する為の技術であり、トランス脂肪酸は、いわばこの反応の副生成物です。水素添加法が普及したのは20世紀ですから、現代人は昔の人と質・量ともにちがうトランス脂肪酸の摂取をしていると言えます。このホームページで、ただトランス脂肪酸といっている場合は、1つ以上のメチレン基によって離された非共役型の、トランス配位の炭素−炭素二重結合をもつ、単価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸のすべての幾何異性体を指します。また牛肉や乳製品など反芻動物に由来する食品にもトランス脂肪酸は存在します。この問題をさらに詳しく知りたい方はトランス脂肪酸の化学の「肉類や乳製品のト ランス脂肪酸」をご覧ください。

2)私達はトランス脂肪酸をどのぐらい摂っているのでしょうか?

 マーガリン一食分10gを摂取すると約8gの脂質が含まれており、脂質中のトランス脂肪酸が10%と仮定すると,約0.8gのトランス脂肪酸を摂った計算になります。なお脂肪量もトランス脂肪酸量も製品によりちがいますので、これは計算の一例にすぎません。トランス脂肪酸には様々な種類があり、全てのトランス脂肪酸を食事から除くことは,栄養価の高い貴重な食品をも排除することになるので、現実的な考え方ではありません。

3)なぜ、最近になってトランス脂肪酸が問題となってきたのですか?

 脂肪の摂りすぎは健康上の問題となること、脂肪酸の種類により身体へ及ぼす影響がちがうことは、これまでもわかっていました。飽和脂肪酸は控えるようにという食事指導は日本を含む多くの国で行われています。また、魚に多く含まれるEPAやDHAといった不飽和脂肪酸は、心臓疾患のリスクを低減することが知られています。
 最近になって、トランス脂肪酸は飽和脂肪酸よりも、悪影響が大きいことがはっきりしてきました。トランス脂肪酸はLDL(悪玉コレステロール)を上げ、HDL(善玉コレステロール)を下げ、心筋梗塞などの発症リスクを高くします。アメリカの疫学調査によれば、トランス脂肪酸の摂取量が多いグループは、心臓疾患の発症率が高くなっています。また糖尿病のリスクが増加することもわかっています。トランス脂肪酸の摂取量が多く、心筋梗塞の問題が深刻な米国などでは、より強い対策が必要ということで、規制も行われるようになってきました。

4)トランス脂肪酸の摂取を、どれだけ減らせば安全でしょうか?

 アメリカ科学アカデミーは、安全といえる数値は出せないと述べています。摂れば摂るだけリスクは増えるので、できるだけ減らすように勧めています。 また国際連合世界保健機関(WHO)と食糧農業機関(FAO)との合同専門家会議では、摂取エネルギーの1%未満にするように勧告しています。

5)どのような食品がトランス脂肪酸の摂取源ですか?

 第一に植物油に水素添加してできたトランス脂肪酸が、摂取源としては大きな比率を占めると考えられます。具体的にはマーガリン、クッキーやパンに使われるショートニングといわれる食用油脂などが含まれます。第二には、牛肉や乳製品など畜産物に由来する食品です。これらの食品から摂取するトランス脂肪酸の割合は、日本では第一のグループから約58%、第二のグループから約26%という計算結果<文献:日本油化学会誌,48,1411(1999)>もあります。米国人の摂取比率の調査結果では、「ケーキ・クッキー・クラッカー・パイ・パンなど」から4割を、乳・肉などの畜産物から約2割を摂っているという記事(この記事の2頁の円グラフを参照)もあります。 食用油脂の脱臭工程においても、高温によりトランス脂肪酸が生成します。ただし、通常の食生活であれば、上記の水素添加や畜産物に由来する食品からの摂取よりは少ないと考えられます。 なお、脱臭工程の加熱と、調理の加熱は、食品総合研究所ワーキンググループはトランス脂肪酸生成の研究では分けて考えています。脱臭工程の加熱によるトランス脂肪酸の生成については従来からわかっていましたが,食品の調理加熱によるトランス脂肪酸は研究中であり、結論に至っておりません。

6)「植物油を加熱してもトランス脂肪酸はできない」ということになるのでしょうか?

 「大豆油を200度で24時間加熱をしても、トランス脂肪酸は生成しない」という論文が2006年に出されています<文献:Liu, W., 2006>。また,微量ではあるが生成を確認した論文も出されています<文献: Moreno, 1999>。さらに詳しく知りたい方は、英文になりますが、参考文献をご覧下さい。
 食品総合研究所ではモデル化合物(トリオレイン;脂肪の1種)を用いて、180〜220℃で加熱することにより、微量のトランス脂肪酸が生成し、その量は加熱時間とともに増加することも確認しています。モデル化合物のみの反応と実際の食品中での反応は異なる場合もあるので、食用油については、さらに研究が必要と考えています。 研究はまだ必要ですが、脂肪の多い食品の加熱によりトランス脂肪酸が生成したとしても、水素添加に由来するトランス脂肪酸に比べれば、摂取比率ははるかに低いでしょう。

7)日本はアメリカよりトランス脂肪酸の摂取は少ないから大丈夫と言えるのでしょうか?

 生活習慣病を予防するためには、トランス脂肪酸はできるだけ減らすことが望ましいと言えます。 日本人の平均的な食事からのトランス脂肪酸摂取量は、 本ホームページに記載しましたように 0.92〜0.96g/日で総摂取エネルギーの0.4〜0.5%と推定され、FAO/WHOの勧告値(エネルギー比率で1%未満)を満たしています。しかし、この日本人の推定摂取量はあくまで平均値であり、偏った食事をしている人の中にはトランス脂肪酸を過剰に摂取しているケースも考えられますので、注意が必要でしょう。 トランス脂肪酸以外にも食生活と生活習慣病は密接に関係しています。各人が脂質を摂りすぎないバランスのよい食事や、また、適度な運動を心がけることが大切です。 日本人の食事摂取基準では、成人での脂質摂取量の目標値は18〜29才で20〜30%、30〜69才で20〜25%、70才以上で15〜25%となっています。ところが、成人で男性約4割、女性約5割の方は、脂質からのエネルギー摂取が25%を超えています。トランス脂肪酸だけでなく飽和脂肪酸も含め、脂質は摂りすぎないように注意しましょう。

8)日本でもトランス脂肪酸の摂取に対して強い対策をとるべきではないでしょうか?

 脂肪の摂りすぎに注意した食生活であれば、トランス脂肪酸により生ずるリスクは低いはずですが、国内の調査・研究が進めば、トランス脂肪酸を対象として措置を取る可能性はあるでしょう。 食生活指針では、「脂肪のとりすぎをやめ、動物、植物、魚由来の脂肪をバランスよくとりましょう。」とあり「脂質(脂肪)のとりすぎは、心臓病や大腸がんなどの原因になるため注意が必要です。」と述べています。日本人の食事摂取基準(2005年版)では、飽和脂肪酸、n-6脂肪酸とn-3脂肪酸についての目標量、目安量という形で具体的な値が示されています。今後、トランス脂肪酸の摂取量調査を含めた研究が進めば、食事摂取基準などにも、トランス脂肪酸の基準が加えられる可能性があります。

9)日本の食品のトランス脂肪酸含量は、海外の製品と比べて低いと言えるのですか?

 日本のマーガリンやショートニングを分析したところ、トランス脂肪酸の割合は米国産のものより低かったという報告<文献:日本油化学会誌,47,195(1998)>も出されています。しかし、むしろ国産のもののほうが米国産より平均値が高かったという論文も2002年には出ています<文献:J. Oleo Sci., 51, 555(2002)>。明確な傾向があるのかどうか、現段階ではわかりません。

10)トランス脂肪酸のうち何を調べているのですか?

 トランス脂肪酸には多数の種類があります。植物油の水素添加で最も多く生じるトランス脂肪酸は,炭素数18で二重結合が一つのものです。水素添加に伴い二重結合がいろいろな位置に移動するため,複数の異性体が含まれます。そのうち代表的なものは、エライジン酸(そのシス型はオレイン酸)です。 トランス脂肪酸の分析において、全ての異性体を測定することは不可能に近く、エライジン酸のみを測定している報告もあります。しかし,エライジン酸以外のトランス脂肪酸の多い食品もあり,必ずしもエライジン酸が主成分とはいえません。
 現在、食品総合研究所では、これらの量の少ないトランス脂肪酸についても分析を検討しています。 各種のトランス脂肪酸は、ヒトの体内での代謝が異なり、作用も様々なものがあると考えられます。トランス脂肪酸ごとの悪影響の程度についても、現段階ではわかりません。

11)トランス脂肪酸を摂りたくないが、どうすればよいのでしょうか。

 日本ではまだ表示義務はありませんが、メーカーによってはインターネット等で製品の含有量を発表しているところもあります。そうした製品を上手に利用することも一手段でしょう。なお、水素添加でできるショートニングオイルは、無味無臭であり、お菓子はさっくりと焼き上がるという特性があるので、広く利用されています。また,マーガリン類も焼き菓子等では広く利用されています。こうした菓子類を多く食べる方は、トランス脂肪酸の摂取が増える可能性は高いでしょう。

12)BSE、メチル水銀など次々に危ない物が報道されますが、トランス脂肪酸はBSEやメチル水銀と、何かちがう点がありますか?

 BSEやメチル水銀といった危害要因と決定的に異なるのは、トランス脂肪酸は生活習慣病の原因となることが、はっきりしていることです。これは疫学調査から明らかであり、トランス脂肪酸を減らせば、減らすだけ動脈硬化などのリスクも下がります。もちろんトランス脂肪酸に限らず、脂質全体の摂り方を見直すことも重要です。

13)ある植物油の、ある温度におけるトランス脂肪酸の生成を知りたいのですが?

 上記のような御質問も寄せられていますが、現在は 6)でおこたえしているように研究中です。また植物油に水素添加してできるトランス脂肪酸に比べれば、加熱により生成するトランス脂肪酸の摂取は、はるかに少ないと考えられます。リスクの大小という点から問題を考えることが必要です。
 なお研究が進んでも、植物油ごとの温度と時間による生成量を、明確な数字で示すことは難しいと予想しています。というのは、植物油ごとに脂肪酸組成は異なり、何を揚げるかによっても、トランス脂肪酸の生成量は変化するでしょう。さらに植物油ごとに抗酸化成分などの共存成分に差があり、共存成分はトランス脂肪酸の生成量に影響を与えると考えられます。抑制的にはたらく場合もあれば、そうでないこともあり、調べた植物油によるばらつきがでます。

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