14 豚のカンジダ性胃炎 〔荒木美穂(沖縄県)〕

 LWD,性別不明,40日齢,鑑定殺例.繁殖母豚200頭を飼養する農場において,離乳舎の豚が移動後3〜4日で水様性下痢を発症したため,抗生剤等で治療したが回復せず,6日後に鑑定殺された.なお離乳舎移動後,3種類の抗生剤を飼料に添加し,下痢発症時は2種類の抗生剤を注射していた.

 剖検では,胃粘膜の一部にび爛と白色化がみられ,十二指腸から結腸では腸管壁が菲薄化し,腸内容は黄褐色水様であった.リンパ節の腫脹等はみられなかった.

 組織学的に,胃(提出標本)の無腺部では錯角化がみられ,有棘細胞は腫大していた(図14A).この部位に酵母様菌,仮性菌糸,炎症細胞の浸潤がみられた.これらの真菌はPAS反応とグロコット染色で陽性を示し(図14B),抗 Candida albicans 抗体(Biogenesis)及び抗 C. tropicalis 抗体(動物衛生研究所)を用いた免疫組織化学的検査で,ともに陽性を示した.噴門腺部では,胃小窩には細胞退廃物が充満し,またヘリコバクター様桿菌が認められた.十二指腸から回腸の粘膜表面に短桿菌の付着がみられた.

 病原検索では,小腸内容の定量培養で,腸管毒素LT,STともに陽性の大腸菌が5.0×107CFU/g分離された.胃について細菌及び真菌検査は行わなかった.ウイルス検査では小腸内容でロタウイルス抗原簡易キット陰性であった.

 以上より,本症例は豚大腸菌症発症豚にみられたカンジダ性胃炎と診断された.

豚のカンジダ性胃炎