20 馬の好酸球浸潤の顕著な出血性結腸炎 〔赤沼 保(青森県)〕

 半血種,雌,1歳,死亡例.肉用馬約80頭を飼養する肥育農場で,感冒治療のためにアンピシリン散の経口投与を受けた馬8頭中4頭が,突然水様性下痢を呈し相次いで急死した.本症例はそのうちの1頭である.

 剖検では,盲結腸粘膜面は不潔暗色で,一部の粘膜は赤黒色であった.胃では無腺部粘膜にウマバエ幼虫が多数付着し,小腸には馬回虫が軽度寄生していた.

 組織学的に,結腸(提出標本)で広範な粘膜上皮の剥離が認められた(図20A).粘膜固有層では,中等度の出血とリンパ球浸潤がみられ,線維素血栓が多発性に観察された.粘膜下組織は軽度に水腫性で,好酸球が高度に(図20B),リンパ球が中等度に浸潤していた.また,中小動脈中膜の平滑筋線維の増生及び空胞化,動脈壁内におけるintimal bodyの形成が散見された.同様の病変は盲腸でも観察されたが,固有層での出血は軽度であった.加えて,副腎皮質の腺細胞間において中等度の出血が認められた.

 病原検索では,主要臓器から病原細菌は分離されなかった.主要臓器からのウイルス分離は陰性,馬ヘルペスウイルス1型及び4型のPCR検査結果は陰性であった.

 以上の成績から,本例は馬のX大腸炎と診断された.原因として抗生剤の経口投与による腸内細菌叢の急激な変動,毒素産生性のクロストリジウム菌( Clostridium perfringens type A,C .difficile )の関与が疑われた.

馬の好酸球浸潤の顕著な出血性結腸炎