3 牛胎子のNeospora caninumによる少数の脳回皮質に限局した非化膿性髄膜脳炎 〔早稲田万大(長崎県)〕

 黒毛和種,雌,胎齢241日,死亡例(流産).2009年3月31日,繁殖牛31頭を飼養する農場において,1頭に流産が発生した.当該母牛は初産で,牛異常産三種混 合ワクチンが接種されていた.

 剖検では,大脳髄膜に充うっ血が認められた.

 組織学的に,大脳(提出標本)皮質にグリア細胞増生,リンパ球・形質細胞による囲管性細胞浸潤,神経網の海綿状化が散発性に認められた(図3A).これらの病巣には原虫のシストが散見され(図3B),抗Neospora caninum家兎血清(動物衛生研究所)を用いた免疫組織化学的検査により,原虫に一致して陽性反応が認められた.皮質病変部の髄膜にリンパ球・形質細胞浸潤が認められた.これらの大脳病変は複数の脳回の皮質に限局して認められた.また,頚髄側索において限局性にグリア細胞の集簇が認められた.

 病原検索では,主要臓器から病原細菌は分離されなかった.また,胎子生臓器を用いたRT-PCR検査により,シンブ血清群ウイルスの特異遺伝子は検出されず,胎子血清及び第四胃内容から,牛異常産関連ウイルスに対する抗体は検出されなかった.

 以上より,本症例は牛ネオスポラ症と診断された.本症例の病変は脳回皮質に限局し,ネオスポラ原虫のシストが病変部周囲に多数認められることが特徴であった.

 

牛胎子のNeospora caninumによる少数の脳回皮質に限局した非化膿性髄膜脳炎