4 Neospora caninumによる牛胎子脳の多発性巣状壊死とグリア結節形成,肝の多発性巣状壊死 〔野田美治(福岡県)〕

 ホルスタイン種,雌,胎齢137日,死亡例(流産).搾乳牛60頭飼養の農場で,4歳の牛が2009年4月15日に双子を流産した.この農場は牛ネオスポラ症発生農場であり,今回,他に2件の流産が発生している.

 剖検では,双子はともに融解が進んでいた.その他に著変は認められなかった.

 組織学的に,脳幹部(提出標本)を中心に巣状壊死が多発しており,これらの壊死巣は小膠細胞によって不整形に包囲され,中心部の粗鬆化が認められた(図4A).肝臓(提出標本)にはランダムに巣状壊死が多発し(図4B),グリソン氏鞘に著しいリンパ球浸潤が認められ,類洞に胎子性の髄外造血が認められた.その他に,肺の多発性巣状壊死,心外・内膜及び心外膜直下の心筋層にリンパ球浸潤が認められた.他の1頭では脳,肝臓,心臓に類似の病変が認められた.抗Neospora caninum抗体,抗牛ヘルペスウイルス(BHV)-1モノクローナル抗体(ともにVMRD)を用いた免疫組織化学的検査により,脳の壊死巣にN. caninum抗原陽性タキゾイトが多数認められたが,肝臓では認められなかった.BHV-1抗原は検出されなかった.

 病原検索では,母牛及び別の流産母牛のネオスポラ抗体は陽性であったが,流産胎子2頭の体液は抗体陰性であった.

 以上から,本症例は牛ネオスポラ症と診断された.肝臓の壊死病変が重度であり,N. caninum以外の原因による病変である可能性が指摘された.

Neospora caninumによる牛胎子脳の多発性巣状壊死とグリア結節形成,肝の多発性巣状壊死