41 馬の大動脈の転移性石灰沈着 〔平澤康伸(滋賀県)〕

 サラブレッド種,雌,2歳,死亡例.県内馬飼養牧場に平成21年1月に県外から導入された.生時より多飲多尿,食欲不振で,ほぼ青草のみ摂食していた.2月初旬より発熱,水様性下痢を示し,獣医師により加療されたが,2月19日死亡し,翌20日に病性鑑定された.

 剖検では,肝臓,腎臓に斑状褪色,大動脈弓内膜及び心内膜に硬結部形成,肺に軽度の硬結,気管内白色泡沫充満,空腸漿膜面に米粒大黒褐色血腫様硬結散在が認められた.

 組織学的に,大動脈(提出標本)では内膜が隆起し,内膜下に広範に高度の石灰沈着が認められた(図41).心内膜は肥厚して表面が広範に高度に隆起し,内膜下に高度の石灰沈着が認められ,軽度のリンパ球浸潤,うっ血,出血が散見された.肺には高度のうっ血,気管支周囲軟骨組織の空隙形成及び石灰沈着,動脈内膜の石灰沈着が認められた.空腸の赤褐色硬結部位に広範な石灰沈着が認められた.腎臓,胃でも石灰沈着が認められた.

 細菌学的検査では主要臓器から病原細菌は分離されず,馬ヘルペスウイルスに対するPCR検査では特異遺伝子は検出されなかった.血液・生化学的検査でも著変は認められなかった.

 本症例は,馬の全身性転移性石灰沈着と診断され,ビタミンD過剰投与などによるカルシウムの代謝異常が疑われたが,原因は特定できなかった.

馬の大動脈の転移性石灰沈着