9 豚の小脳における豚サーコウイルス2b型が関与した血管のフィブリノイド壊死及び出血を伴う壊死 〔和久田高志(静岡県)〕

 LWD種,雌,60日齢,鑑定殺例.母豚200頭規模の一貫経営農場で,2008年秋頃より離乳舎で発育のばらつきがみられ,60日齢程度で約1%に神経症状がみられた.翌年4月に,60日齢の発育良好な1頭が遊泳運動,削痩した2頭が歩様異常を呈したため,鑑定殺された.提出症例は削痩を呈した2頭中の1頭である.

 剖検では,小脳に充出血,肺の一部に肝変化がみられた.

 組織学的に,小脳(提出標本)では皮質から髄質にかけて重度の出血及び壊死が認められ(図9),プルキンエ細胞や顆粒細胞の減数がみられた.血管にフィブリノイド壊死が散見され,血栓が多発していた.壊死巣では中程度のマクロファージ浸潤がみられ,血管周囲やマクロファージ内にPAS陽性顆粒が認められた.髄膜では壊死性血管炎,リンパ球及びマクロファージ浸潤がみられた.大脳や脳幹の髄膜ではリンパ球及びマクロファージ浸潤や線維素の析出がみられた.リンパ系組織ではリンパ球数の減少と好塩基性細胞質内封入体がみられた.抗豚サーコウイルス(PCV)2型家兎血清及び豚血清(動物衛生研究所)を用いた免疫組織化学的検査で,小脳実質及び髄膜の血管内皮,中膜及び浸潤マクロファージに陽性抗原が認められた.

 病原検索では,脳乳剤からPCV2特異遺伝子が検出され,遺伝子解析によりPCV2bと決定された.細菌学的検査で病原細菌は分離されなかった.

 以上から,本症例は豚サーコウイルス関連疾病(PCVAD)と診断された.小脳病変は海外の報告と類似しており,検査結果からPCV2の関与が考えられた.

豚の小脳における豚サーコウイルス2b型が関与した血管のフィブリノイド壊死及び出血を伴う壊死