1 豚の大脳における好酸性滴状物を伴った Streptococcus suis による化膿性脳室炎・髄膜炎 〔柴田淑子(神奈川県)〕

 豚,去勢,41日齢,鑑定殺.2010年5月に,飼養豚約1,000頭の一貫経営農場において,離乳豚数頭が振戦などの神経症状を呈したため,病性鑑定を実施した.

 剖検では,心膜水の少量貯留,左心内膜に出血がみられた.胃壁が水腫性に肥厚し,一部赤色化がみられた.腎の外側縁に腎門部様の陥凹部がみられ,褐色を呈していた.

 組織学的に,脳室腔内にマクロファージ,好中球,リンパ球,好酸球が浸潤していた(図1).脳室辺縁ではマクロファージ,リンパ球,好中球が浸潤し,細胞質内にPAS陽性の好酸性滴状物を含む細胞が多数みられた.周囲の血管では囲管性にリンパ球が著しく浸潤し,好酸球もみられた.また,一部の血管周囲にPAS陽性の好酸性滴状物が認められた.大脳の髄膜ではグラム陽性の球菌,リンパ球,好中球,好酸球の軽度浸潤がみられた.皮質と髄質において,神経細胞の萎縮・変性が認められ,皮質の一部でグリア細胞の集簇がみられた.

 病原検索では,脳及び心膜水から Streptococcus suis が分離された.十二指腸〜空腸上部内容物のE. coliの定量培養の結果,106cfu/g以上であり,大腸菌毒素検査では,VT,ST1,ST2,LTは陰性であった.ウイルスは分離されなかった.

 本症例を豚レンサ球菌症と診断したが,好酸性滴状物や血管周囲に好酸球がみられたことから,大腸菌や食塩中毒の関与も推測された.

豚の大脳における好酸性滴状物を伴ったStreptococcus suisによる化膿性脳室炎・髄膜炎