10 鶏における鶏アデノウイルス2型による核内封入体形成を伴った肝細胞の変性・壊死 〔高橋幸治(宮城県)

 チャンキー,13日齢,雄,肉用,鑑定殺.同系列の2農場で2010年1月14日頃から斃死羽数が急増したとの連絡が,1月18日にあった.斃死羽数は,A農場(30,000羽飼養)で,14日0羽,15日125羽,16日80羽,17日30羽,18日13羽,B農場(20,000羽飼養)で,14日43羽,15日50羽,16日127羽,17日147羽,18日76羽であった.同日農場に立入検査を実施した.呼吸器及び下痢などの臨床症状は確認できなかったが,A農場10羽,B農場5羽でインフルエンザ簡易検査陰性を確認した.1月19日にはA農場では斃死鶏はみられなかったが,B農場では51羽の斃死があり,原因究明のため鑑定殺を実施した.

 剖検では,肝臓は褪色し点状出血が散在していた.腎臓も褪色していた.肝臓の褪色は,8羽中6羽で認められた.

 組織学的には,肝臓で肝細胞の高度の壊死と脂肪変性が認められた.壊死は肝包膜下で特に高度であった.壊死部周囲の肝細胞では高頻度にfull型の好塩基性核内封入体が認められた(図10).また,Cowdry A型の核内封入体も散見された.血管周囲では単核細胞の集簇が認められた.抗鶏アデノウイルスグループT家兎血清(動衛研)を用いた免疫組織化学的検査で,壊死部に一致してウイルス抗原が検出された.その他の組織では,膵臓で核内封入体を伴う多発性巣状壊死が認められ,同部位でも鶏アデノウイルス(FAV)の抗原が検出された.

 ウイルス学検査では,肝臓を用いた遺伝子学的検査においてもFAVの遺伝子が検出され,肝臓と腎臓からFAVが分離された.分離株は遺伝子系統樹解析の結果,血清型2型であった.また,鶏伝染性気管支炎については陰性であり,ニューカッスル病ウイルスの分離・抗体検査は陰性.鳥インフルエンザ分離陰性であった.細菌は分離されなかった.血清生化学的検査において,GOTが高値(>1,000U/l)を示した.

 以上の所見より本症例は,鶏封入体肝炎と診断された.

鶏における鶏アデノウイルス2型による核内封入体形成を伴った肝細胞の変性・壊死