16 子牛の慢性胆嚢炎 〔矢野敦史(香川県)〕

 交雑種,雌,約4カ月齢,鑑定殺.2010年2月に食欲不振,腹囲の膨満,軟便がみられた.抗生物質による治療に反応せず治療を終了.同年5月,依然腹囲の膨満があり,発育不良のため病性鑑定に供した.

 剖検では,肝臓表面に微小な白色結節が認められた.胆嚢壁は肥厚し,緑色の胆汁を少量容れていた.第一胃は腫大し,粘膜では第一胃乳頭が内容物及び体毛により接着し,小塊を形成していた.十二指腸及び回盲部粘膜の一部に充血が認められた.

 組織学的に,胆嚢は粘膜固有層にリンパ球及びマクロファージの浸潤,線維の増生がみられた(図16).肝臓ではチフス様結節が散見され,小葉間胆管周囲にリンパ球,マクロファージ,好中球の軽度浸潤が認められた.第一胃は角化層に好中球の浸潤,粘膜固有層に好中球,リンパ球の浸潤がまれに認められた.第三胃は角化層に好中球の浸潤,粘膜固有層にリンパ球の浸潤が認められた.十二指腸は絨毛が軽度に萎縮し,粘膜上皮の壊死,粘膜固有層にリンパ球の浸潤が認められた.胆嚢,十二指腸,肝臓,脾臓のグラム染色は陰性,サルモネラ血清(O多価,O1多価:デンカ生研(株))による免疫組織化学的検査も陰性であった.

 主要臓器の細菌学的検査では分離陰性であった.パラフィン切片のPCR検査で胆嚢と十二指腸からサルモネラ特異遺伝子が検出された.ウイルス学的検査で主要臓器のウイルス分離検査は陰性であった.血液生化学検査では,γ-GTP:24U/l,Tchol:57mg/dl,Glu:78mg/l,TG:<10mg/dlから肝臓の障害が示唆された.

 本症例は慢性胆嚢炎と診断され,その原因としてサルモネラの関与が疑われた.

子牛の慢性胆嚢炎