17 BLV陽性牛の脾臓にみられたγδT細胞性リンパ腫 〔万所幸喜(京都府)〕

 ホルスタイン種,雌,38カ月齢,斃死例.成牛12頭を飼養する酪農家で,2009年11月以降に1頭の体表に乳頭腫様腫瘤が拡がり,乳量が低下した.2010年2月に起立困難となり,その後斃死した.

 剖検で,体表の腫瘤は乳房から会陰部にかけて密発し,皮下織とは遊離していた.各リンパ節は手拳大から小児頭大に腫大し,心臓,右腎,子宮の一部に灰白色腫瘤が認められた.

 組織学的に,脾臓では腫瘍細胞が中等度に浸潤増殖し,固有構造が消失する領域も認められた.腫瘍細胞は中型から大型で多形性を呈し,まれに有糸分裂像が観察された(図17).皮膚では,腫瘍細胞は真皮で顕著な増殖が観察され,表皮への浸潤がみられた.同様の上皮向性は消化管,乳腺及び子宮においても観察された.抗CD79α抗体(DAKO),抗CD3抗体(DAKO),抗WC1抗体(SEROTEC)を用いた脾臓及び皮膚の免疫組織化学的検査で,腫瘍細胞はCD79α陰性,CD3陽性,WC1陽性であった.

 血液検査では,白血球数22,000/μl(百分比:Seg 13%,Lym 82%,Mon 4%,Eos 1%)で,リンパ球異型率は89%だった.

 病原検索では,2008年のBLV抗体検査,生前のBLV遺伝子検査及びパラフィン切片からのBLV遺伝子検査のすべてが陽性であった.

 以上の結果から,本症例はBLV陽性であったものの腫瘍細胞は上皮向性を呈し,γδT細胞の性質を呈していたことから,牛白血病(皮膚型)(上皮向性γδT細胞性リンパ腫)と診断された.

BLV陽性牛の脾臓にみられたγδT細胞性リンパ腫