18 哺乳豚の脾臓におけるオーエスキー病ウイルスによる核内封入体を伴う多発性巣状壊死 〔矢島佳世(栃木県)〕

 LWD種,性別不明,7日齢,斃死例.2010年3月8日に母豚,300頭を飼養する一貫経営農場の分娩舎において,一腹の哺乳豚に被毛粗剛及び集団でのうずくまりが認められた.10日後には同様の症状が分娩舎全体に広がり,呼吸器症状や神経症状も観察された.また,肥育舎でも元気消失を呈する肥育豚が認められた.抗体検査でオーエスキー病(AD)野外ウイルスの抗体陽転を確認したため,19日に斃死した哺乳豚について病性鑑定を行った.

 剖検では,肝臓の漿膜面及び割面に針尖大の白色壊死斑が多発性に認められた.

 組織学的に,脾臓で多発性の巣状壊死が認められた(図18).壊死巣周辺には,両染性ないし好酸性のフルタイプまたはハローを伴う核内封入体が認められた.同様の封入体を伴う巣状壊死は肝臓,肺,副腎,扁桃,各諸リンパ節においても観察された.また大脳では核内封入体を伴う神経細胞の変性・壊死及び微小壊死巣,脳幹,小脳及び脊髄では微小壊死巣がみられた.抗ADV家兎血清(動衛研)を用いた免疫組織化学的検査では,壊死部に一致して陽性抗原が検出された.

 病原検索では,扁桃及び鼻腔スワブから,ADウイルスが分離された.

 以上から,本症例はオーエスキー病と診断された.

哺乳豚の脾臓におけるオーエスキー病ウイルスによる核内封入体を伴う多発性巣状壊死