25 牛の腎臓と空腸のAAアミロイドーシス 〔萩原妙子(千葉県)〕

 ホルスタイン種,雌,4歳8カ月齢,鑑定殺.2009年3月,搾乳牛66頭を飼養する農場で,成牛が慢性的な水溶性下痢,削痩及び下顎と胸垂の浮腫を呈した.本症例には第4胃左方変位,関節炎及び蹄底潰瘍の既往歴があった.臨床症状と,血液及び尿検査結果からアミロイドーシスが疑われた.同居牛に同様の症状はみられなかった.

 剖検では,腎臓は左右とも高度に腫大・褪色し,割面のヨード反応では皮質に微細な黒色点を多数認めた.腸管,腸間膜及び腹腔内の結合組織に水腫がみられた.組織学的に,腎臓の糸球体,毛細血管周囲,小血管壁及び髄質の間質に硝子様物質の沈着がみられた.この物質は,コンゴーレッド染色,ダイレクトファーストスカーレット染色,チオフラビンT染色で偏光もしくは蛍光を発し,過マンガン酸カリ処理後のコンゴーレッド染色で染色性が消失した.また,マウス抗アミロイドAタンパク(AA)抗体(KYOWA)に陽性反応を示した.空腸では,粘膜固有層と毛細血管周囲に同様の硝子様物質の沈着(図25),リンパ管拡張と粘膜下組織の高度の水腫がみられた.

 病原検索では,主要臓器と腹水から病原細菌は分離されなかった.糞便の直接塗抹標本の抗酸菌染色で抗酸菌の集塊を認めず,ヨーネ病の抗体検査も陰性であった.血液検査では,TP(3.6mg/dl)とAlb(1.6mg/dl)の低下,高BUN(30.2mg/dl),A/G(0.33)低下,ネフローゼ型の蛋白分画像がみられた.尿検査では高蛋白尿を認めた.

 以上から,本症例の疾病診断は牛の全身性アミロイドーシスとされた.

牛の腎臓と空腸のAAアミロイドーシス