28 豚の Haemophilus parasuis による壊死性線維素性化膿性胸膜肺炎 〔荒木美穂(沖縄県)〕

 デュロック,雄,6カ月齢,斃死例(死後約6時間で剖検).母豚250頭規模の繁殖経営農場において,当該雄1頭他を外部より導入後約10日で当該豚のみ食欲不振を呈し,解熱剤,強肝剤を投与したが2日後に斃死したため,病性鑑定を実施した.

 剖検では,肺は全葉で赤色を呈し,肺胸膜と胸壁の線維素性癒着,顕著な小葉間水腫がみられ,周辺リンパ節は腫大していた.線維素性心外膜炎,黄色腹水貯留,腹腔内臓器に広範な多発性線維素性漿膜炎が認められた.

 組織学的には,肺胸膜表層に線維素析出,好中球・組織球浸潤,胸膜下及び小葉間結合組織に線維素析出,炎症性細胞浸潤,リンパ管拡張がみられた.肺小葉内では細気管支・血管周辺の肺胞内に線維素析出があり,その周囲を崩壊した好中球が分界していた(図28).その他の肺胞腔内に多量の好中球浸潤,漿液貯留がみられた.免疫染色(抗血清:動衛研)により, Haemophilus parasuis 抗原が壊死巣及び肺胞腔内炎症性細胞に検出されたが,App2型抗原は陰性であった.

 病原検索では,肺から H. parasuis が分離された.扁桃での豚コレラウイルス分離は陰性,肺での Mycoplasma hyopneumoniae 及び Mycoplasma hyorhinis のPCR検査も陰性であった.

 本症例は,胸膜炎のみならず肺小葉内細気管支・血管周囲の好中球性分界炎を伴った H. parasuis 感染症の非典型例であった.

豚のHaemophilus parasuisによる壊死性線維素性化膿性胸膜肺炎