41 鶏の鶏痘ウイルスによる皮膚の表皮細胞の風船様変性と細胞質内封入体を伴う皮膚炎 〔橋田明彦(岡山県)〕

 デカルブブラウン,490日齢,雌,採卵用,鑑定殺.採卵鶏2,800羽を飼養する農場で,2007年7月27日生まれの鶏群に顔面全体に丘疹を呈するものが数羽発生した.本鶏群のワクチン接種歴は0日齢MD,15日齢NBL,20日齢POX,25日齢IBD,30,50日齢NB,40,80日齢IB,60日齢ILT,70日齢POX,NB2MG,90日齢AEであった

 剖検では,顔面無羽部,特に眼瞼及び頬部に丘疹が密発していた.その他の部位では皮膚病変はなく,臓器にも著変は認められなかった.

 組織学的には,病変部表皮は顕著に肥厚し,有棘細胞が増生及び膨化していた.膨化した有棘細胞には,細胞内に類円形で淡染する好酸性細胞質内封入体が認められた(図41).表層は壊死し,細菌塊を含む部位も認められた.壊死巣と真皮の境界部では偽好酸球が浸潤し,その下層にはリンパ球が高度に浸潤し,線維芽細胞が増生していた.その他の臓器に著変は認められなかった.

 病原検索のため,発痘部皮膚の10%乳剤を発育鶏卵漿尿膜上に接種し培養したところ,ポックを形成した.これからDNAを抽出し,PCRにより鶏痘ウイルス(FPV)特異遺伝子を検出した.さらに検出されたFPV特異遺伝子に細網内皮症ウイルス(REV)遺伝子の挿入が認められた.また漿尿膜上のポックをホルマリン固定しHE染色を実施したところ,好酸性細胞質内封入体が認められた.

 以上のことから,鶏痘(皮膚型)と診断された.

鶏の鶏痘ウイルスによる皮膚の表皮細胞の風船様変性と細胞質内封入体を伴う皮膚炎