1 鶏の肝の多発性巣状壊死・肉芽腫及び Escherichia coli O2による肉芽腫性被膜炎 〔関口美香(大阪府)〕

 ボリスブラウン種,雌,162日齢,鑑定殺.採卵鶏7,000羽飼養農場で,2010年5月初旬に約110日齢の鶏群を導入した.150日齢頃に元気・食欲が低下し,一部に鼻汁や奇声等の呼吸器症状,軟卵や破卵,水様性下痢等が継続して認められたため,病性鑑定を実施した.一部の鶏は240日齢頃に回復した.

 剖検では,卵墜がみられ,腹膜は肥厚混濁し諸臓器と癒着していた.肝臓には白色膜様物が付着し,多発性に点状から斑状の白色病変が認められた.心膜は白濁し肥厚していた.

 組織学的に,肝臓に多発性の大小壊死巣(図1)が認められた.壊死は退廃物を中心とし,多核巨細胞や大食細胞が増生し,その周囲に偽好酸球,リンパ球の浸潤がみられ,結合組織が増生していた.単核細胞浸潤によって構成された肉芽腫も散見された.心外膜,体腔臓器漿膜は偽好酸球,リンパ球の浸潤,線維素沈着,結合組織増生等で肥厚し,グラム陰性菌が多数認められた.抗 Escherichia coli (K12,C600)lysate家兎血清(DAKO)を用いた免疫組織化学的染色で菌に一致して陽性反応が認められた.

 細菌学的検査では,肝,腎,脾,心,肺,脳から大腸菌(血清型:O2)が分離された.

 以上から,本症例は鶏の大腸菌症と診断されたが,肝臓の多発性壊死及び肉芽腫病変には大腸菌は確認されず,その関与は不明であった.

鶏の肝の多発性巣状壊死・肉芽腫及びEscherichia coli O2による肉芽腫性被膜炎