17 豚の小脳及び橋における微小膿瘍を伴った非化膿性髄膜脳炎 〔柴田淑子(神奈川県)〕

 交雑種,去勢,46日齢,斃死例.約700頭を飼養する一貫経営農場において,2011年1月末より哺乳豚の虚弱,斃死が腹単位で続いていた.2月2日,46日齢の哺乳豚が起立不能,眼球振盪,腹式呼吸を呈し斃死したため,病性鑑定を実施した.

 剖検では,右肺前葉で小葉間の拡張がみられた.その他の臓器に著変はみられなかった.

 組織学的に,小脳,橋及び脊髄において囲管性細胞浸潤,グリア結節,神経食現象がみられた.病変は橋から脊髄にかけての検索部位でより重度であった(図17).一部で微小膿瘍が認められた.大脳では同様の病変が軽度にみられるのみであった.髄膜及び脊髄神経節では単核細胞が軽度浸潤していた.肺では肺胞中隔が肥厚し,同部にはPAS反応陽性の好酸性泡沫状物が密着し,グロコット染色で黒色の嚢子が認められた(ニューモシスチス肺炎).大脳,小脳,脊髄,肺における抗豚繁殖・呼吸器症候群ウイルス(PRRSV)モノクローナル抗体(SR30,Rural Technologies)を用いた免疫組織化学的染色では陽性反応はみられなかった.

 病原検索では,豚コレラFA陰性,ウイルス分離陰性であった.血清からPRRSV特異遺伝子が検出された.PRRS,オーエスキー病のELISA検査は陰性であった.主要臓器から細菌は分離されなかった.

 本症例は,非化膿性脳脊髄炎が橋から脊髄にかけて主座し,大脳では軽度にみられる特徴的な病変分布を示したことから豚エンテロウイルス性脳脊髄炎が疑われたが,ウイルスは分離されず,原因の特定には至らなかった.

豚の小脳及び橋における微小膿瘍を伴った非化膿性髄膜脳炎