25 牛のリステリア症 〔高井 光(石川県)〕

 ホルスタイン種,雌,2歳,斃死例(死後半日で解剖).乳用牛80頭をフリーストール牛舎で飼養する酪農家において,2008年5月16日,搾乳牛1頭が食欲廃絶,ふらつき,左顔面麻痺を呈した.対症療法を施したが症状は改善されず,5月20日斃死した.

 剖検では脳軟膜は白濁していた.その他,主要臓器に著変はなかった.

 組織学的には,延髄ではリンパ球,組織球系細胞,好中球による囲管性細胞浸潤(図25),グリア細胞の結節性増殖,微小膿瘍が多発していた.また,び漫性に神経網が粗鬆化し,血管周囲腔では出血していた.同様の病変は他の脳幹部検査部位にも存在したが,大脳半球,小脳では認められなかった.抗 Listeria monocytogenes 1a及び4b抗体(動衛研)を用いた免疫組織化学的染色の結果,微小膿瘍に一致してL. monocytogenes 4b抗原が検出された.

 大脳,小脳,脳幹部(橋及び延髄部位),髄液,主要臓器及び直腸便から菌分離を試みたところ,脳幹部より L. monocytogenes が分離された.また,農場内の環境調査(飼料,敷き料),同居牛検査(4頭の直腸便,バルク乳)を実施したところ,同居牛1頭の糞便より L. monocytogenes が分離された.なお,当該牛のBSE-ELISA検査は陰性であった.

 以上より,本症例は牛のリステリア症と診断された.

牛のリステリア症