5 鶏の伝染性喉頭気管炎ウイルスによる合胞体形成及び核内封入体を伴う漿液膿性カタル性鼻炎 〔稲垣明子(愛媛県)〕

 ボリスブラウン種,雌,251日齢,鑑定殺.伝染性喉頭気管炎ワクチン未接種の採卵鶏農家で,産卵率低下と死廃の増加が認められたため,2011年2月6日に,鼻汁漏出,流涙,顔面腫脹,異常呼吸音を呈した鶏について病性鑑定を実施した.

 剖検では,右顔面の眼瞼から頬部にかけて腫脹がみられ,眼瞼は閉鎖していた.その他,気嚢の混濁,気管の軽度出血がみられた.

 組織学的に,鼻腔の粘膜上皮で好酸性及び両染性の封入体を伴う合胞体が多数認められた.粘膜固有層はリンパ球が高度に浸潤し,腔内には剥離粘膜上皮細胞,核内封入体を伴う合胞体(図5),偽好酸球,マクロファージ,漿液性滲出物の貯留があり,細菌塊が多数観察された.眼窩下洞では腔内に合胞体を含む滲出物が貯留していた.右頬部の皮下組織は水腫を伴い,マクロファージの軽度浸潤が認められた.気管では,粘膜上皮に合胞体及び核内封入体が認められ,粘膜固有層にはリンパ球が浸潤し,肥厚していた.内腔には粘膜上皮,細菌塊,偽好酸球等の滲出が認められた.その他,肺の二次気管支内腔への剥離粘膜上皮細胞,細菌塊等の貯留と,心臓の心筋間質における単核細胞の軽度浸潤が散見された.

 病原検索では,気管,肺乳剤から伝染性喉頭気管炎ウイルス,気管から Pasteurella gallinarum,眼窩及び鼻汁から Staphylococcus hyicus,S. chromogenes が分離された.

 以上から,本症例は,鶏の伝染性喉頭気管炎と診断された.

鶏の伝染性喉頭気管炎ウイルスによる合胞体形成及び核内封入体を伴う漿液膿性カタル性鼻炎